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東京駅で「売れ残り」救出、その効果は? 食品ロス対策に“企業間連携”が欠かせない理由「食品ロス」削減への現在地(5/5 ページ)

» 2020年02月21日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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食品の需要予測情報を「共有化」

 2050年に食品ロスの「実質ゼロ」を目指す東京都は、19年に日本気象協会と共同で、需要予測に関する実証実験を実施した。この事業のポイントは「情報共有」だ。気象やPOSデータ、AI技術を活用した需要予測モデルを構築し、その情報をサプライチェーンで共有化する。製造、卸、小売の各段階で需要予測情報を共有することで、製造しすぎないようにする取り組みだ。

 また、17年から「食品ロス削減パートナーシップ会議」を開催。スーパーや飲食店、食品メーカー、卸事業者などの業界団体の代表者が顔をそろえる。1月に実施した8回目の会議では、19年12月末のクリスマスケーキの販売方法が話題に上った。廃棄を出さないために完全予約制で販売する動きが目立ったことから、「市場規模は広がらなかったが、ロスを減らすことができた」という話があったという。

 「経営とのバランスは難しいと思うが、『食品ロスを減らす』という共通の考えを持っていただいている」と、東京都環境局 資源循環推進部の担当者は話す。1社だけで取り組むのは限界があるが、一緒に取り組めば、技術の活用や商習慣の見直しへの道も開ける。

 一方、事業者の取り組みだけで解決する問題ではない。行政としては、消費者への啓蒙も大きな課題だ。商業施設でイベントを実施したり、子どもへの食育を強化したりと、継続的な取り組みを続けている。

 実際に、「消費者の皆さんの意識も変わってきた」(担当者)という。近年、節分の日に販売される恵方巻の廃棄が大きな話題になっていたが、この1年を振り返ると、他の季節商品でもロスを減らす取り組みや呼びかけが増え、できるだけ廃棄を出さないようにすることが自然な施策として受け入れられるようになった。

 東京都の食品ロスは約50万トン(17年度)。50年までに、堆肥などへの再利用も活用する“実質ゼロ”を目指す。30年までの中間目標として、00年の76万トンからの半減を掲げている。

 それを実現するために必要なこととして、担当者は「技術革新」と「食文化のシフト」を挙げる。需要予測や食品製造技術の向上に加えて、私たちがこれまでの食習慣を見直すことが必要といえる。

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