過度にセキュリティを保護してしまったテレワークのシステムは、在宅業務を確実にやりづらくする可能性を孕む。同時に比嘉教授が危惧するのが、「自社のシステムが使いづらいと感じた従業員が、個人で勝手に仕事のデータのやりとりを“工夫”し始めた際の情報漏えいリスク」だ。
「テレワークで(データのやりとりなどが円滑に)できない状況を、個々人が勝手な判断で『できる』ようにするケースも出てくるのではないか。例えばネット上で無制限に会社の機密データのやりとりをし始めたら、ハッカーに狙われる可能性もある」(比嘉教授)。
これらの背景にあるのは、社員に対する教育の甘さやシステムの不備など、あくまで平時にも存在していたセキュリティリスクだという。「そもそもセキュリティに問題のある企業がテレワークをやったらこうなる、というだけ。やはり、テレワーク自体が問題な訳ではない」(比嘉教授)。
現場の従業員だけでなく、彼らをマネジメントする管理職側も戸惑う可能性が高い、と比嘉教授は推測する。「彼らの多くは『テレ(=遠隔)マネジメント』をやってきていないはず。急に部下が目の前から消えてしまったマネジャーに対するサポートを企業側は考えるべきだ」。
例えば、テレワークにおける管理職向け指導でとある企業が行った有効例として比嘉教授が挙げるのが、「部下に対する『頑張れよ』メールの禁止」だとか。「部下が『仕事のこの部分で苦労している』などと連絡した時は、『具体的にこうしてくれ』といった指示を出すメールを徹底すべき」。対面ではできていたコミュニケーションが、文字だとできなくなる上司も少なくないためで、こうした地味なマネジメントの工夫もテレワークには必要になりそうだ。
SNS上ではテレワーク体制の不備に対する不満や批判など、さまざまな議論が既に発生している今回の騒動。比嘉教授は「(今回の緊急)テレワークを企業も従業員も“耐え忍ぶ”のでなく、むしろ『実際にできたこと』『できなかったこと』を明らかにし、その原因について分析してほしい」と提言する。「今回、各企業が分析したテレワークの問題点を国がまとめ、ノウハウとして共有するといった試みがあれば、今後の推進に弾みをつけるチャンスになる」
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