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新型コロナ防止のため「働き方改革」できない企業に明日が無い、真の理由“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2020年03月03日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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7.病院のむやみな受診の抑制

 満員電車などと並んで感染拡大の温床になると言われているのが、実は病院である。不安というだけの理由で特に症状もないのに病院を受診する人が増えているが、こうした行為は控えた方がよいだろう。自身が病院で感染するリスクもあるし、何より来院者が増えてしまうことで、本当に治療が必要な患者への対処に制約が生じる可能性もある。

感染症対策、実は働き方改革内容と同テーマ

 一連の感染防止対策を客観的に眺めて見ると、ほとんどの項目が「働き方改革」と密接に関係していることが分かる。過重労働の抑制や時差出勤、業務のIT化(ペーパーレス化)、不要な会議の中止といった内容は、以前から働き方改革として何度も議論されてきたテーマである。

 先ほど、通常のインフルエンザで毎年3000人以上が亡くなっているという話をしたが、超過死亡(インフルエンザの流行がなければ回避できたと推定される死亡者数)を考慮すると、死亡者数は1万人を超えるともいわれる。インフルエンザによる死亡者数はリーマンショック以降、急増しており、これは異常事態といってよい。つまり、今回のコロナウイルスがなかったとしても、感染症対策というのは日本の企業における緊急課題なのである。

 企業にとっては大きな負担だが、業務のIT化と感染症対策の親和性が高いことは、企業にとってむしろ朗報であると考えた方がよいだろう。

 働き方改革をしっかり実施できる企業は、感染症にも強く、社員の健康が維持されることになる。逆に言えば、こうした対処ができる企業とできない企業では、そこで働く社員の生活に質的な格差が生じる可能性もある。社員の側にも、こうした対策を実施する企業を選択していくという主体的な意識が必要となる。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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