「五輪強行」のほうが経済的損失が大きい、3つの理由スピン経済の歩き方(3/7 ページ)

» 2020年03月17日 09時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

感染症対策をガタガタに

 このような直接的な経済的ダメージに加えて、簡単にカネではじき出すことのない損失も生まれる。それが(2)の「感染症対策+熱中症対策+外国人対応で医療がパンク」だ。

 治療法が確立されるなど状況が改善しない中で五輪を強行してしまうと、現場の人たちのがんばりで辛うじて維持されている医療インフラがガタガタに崩壊してしまう恐れがある。その甚大な被害はプライスレスというか、お金で換算できるようなものではないほど深刻なのだ。

 なぜガタガタになるのか。ここ最近のパニック続きで忘れている人も多いだろうが、実はTOKYO2020には、新型コロナだけではない深刻な医療リスクが指摘されていた。真夏の炎天下の中で、競技をする人たちや、観戦をする人たちがバタバタと倒れていく「熱中症リスク」だ。

 つまり、この大会期間中、医療関係者は世界中から集まってくる人々が熱中症になることの対応をしなくてはいけないだけでなく、発熱した人のPCR検査や隔離という感染症対策までしなくてはいけないということなのだ。

 TOKYO2020で想定していた医療体制は完全にパンクするだろう。そうなると、1300万都民が受けている医療にも大きな影響が出てくることは容易に想像できる。

 「そんな根も葉もないデタラメを言うな! 東京都はすごい金をかけて熱中症対策をしているので、そんなパニックになることはない」と主張される方もいるが、例の傘のようなヘンテコな帽子をつくったり、打ち水がいいとか言い出しているように、東京の「熱中症対策」はかなり怪しい。

 例えば、道路を涼しくするという触れ込みで、莫大な税金が投入された「遮熱性舗装」については、2019年8月30日の日本スポーツ健康科学学会で、東京農業大の樫村修生教授がこの道路の上を走っている人間が体感する温度が、普通のアスファルト道路よりも高くなったという研究を発表されている。

 熱中症対策のハイテク技術と組織委員会が胸を張るミストシャワーも同様で、昨年7月下旬、お台場のビーチバレーボール大会の会場でテストが行われたが、そこで計測された暑さ指数は、環境省が「全ての生活活動で熱中症になる危険」とする28度を大きく超えた31.1度だった。

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