「五輪強行」のほうが経済的損失が大きい、3つの理由スピン経済の歩き方(6/7 ページ)

» 2020年03月17日 09時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本に悪い印象

 冷静に考えれば当然だ。多くの国ではほんの2〜3カ月前まで非常事態宣言やらで苦しめられていた。そんな中で、自国の利益のためとはいえ、またしても感染拡大の恐れのあるイベントを開く国に好感を抱くわけがない。ましてや、五輪をやるということは、感染が発生したと言われる中国からの選手や観光客もわっと日本に集うことでもある。これを海外の人々がみな問題なく受け入れるとは思えない。下手すれば、「ウイルスをバラまいているのはアジア人」という人種差別を助長するかもしれないほどの悪手なのだ。

 みなさんがこの夏休み、中国人の友人から「武漢でバカンスを楽しもう」と誘われてどう感じるのかというのと一緒だ。大丈夫だという人もいるが、「冗談じゃない」という人もいる。その議論が割れているうちは、「平和の祭典」とかフワっとしたスローガンで押し切るべきような問題ではない気がしている。

 では、具体的にどうすればいいのか。個人的には、早々に五輪を中止して損失もかぶることを条件に、アメリカやIOC、WHOと話をつけ、日本主導で「新型コロナ撲滅の記念イベント」を開催する方向へ持っていったほうがいいのではないかと考えている。

「東京2020オリンピック・パラリンピック」のマスコット

 今回のウイルスは過去の感染症と比べてそれほど人間は殺していないが、人間の醜さを残酷なまでに浮かび上がらせている。国や民族を断絶して、人種差別、デマ、買い占めなど人間をエゴに走らせた。そういう意味では、人類に与えたダメージは深刻である。

 だからこそ、ウイルスを完全に制圧できたときに、国際社会でもう一度改めてこの戦いに勝利をしたことを確認するようなイベントが必要なのではないか。もちろん、そこでスポーツをやってもいいが、世界中でさまざまなエンタメも自粛をしている。

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