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新型コロナ対策で露呈 「社員から確実に見放される企業」とは?“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2020年04月02日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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「来社強要」の愚かさ

 一部の企業では、首都圏での感染爆発が懸念されているこの時期においても、打ち合わせのため遠方からの来社を事実上、強要しているともいわれる。取引先との力関係上、断れない企業も多いようだが、こうした行為を続けていると、確実に感染を拡大させてしまう。

 むやみに取引先を呼びつける企業や、こうした顧客に対してきっぱりと面会延期を申し出られない企業は、労働者からするとリスクの高い勤務先ということになるだろう。

 今回の問題はウイルスによる感染症なので、どこかのタイミングで終息を迎え、その後、社会は定常運転に戻ることになる。だが各企業の振る舞いは、その企業の実績として後々まで残ることになる。

会社選びの基準、激変?

 日本経済はこの先、長期的な低迷が予測されており、日本国内で仕事をしている限り、賃金が順調に上がっていくというシナリオは描きにくい。そうなってくると労働者側は、企業に対して賃金以外の面でどのようなメリットがあるのか、強く問いかけるようになるだろう。

 以前もこのコラムで指摘したが、ウイルス対策と働き方改革というのはセットであり、ウイルス対策をしっかり実施できる組織というのは、働き方改革にも積極的である。感染終息後の社会では、こうした観点で企業を選ぶビジネスパーソンが増えてくるに違いない。

 当然のことながら企業にとっては逆のことが言える。高い賃金を支払えない以上、危機管理などの面で十分な魅力を提示できない企業は、優秀な人材が集まらないことになる。今回のコロナウイルスの感染拡大は、普段は見えていなかった組織の「底力」の違いを可視化する結果となるだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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