クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

船からトラックまで 水素ラッシュを進めるトヨタ池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2020年04月06日 07時15分 公開
[池田直渡ITmedia]

中部圏水素利用協議会

 それぞれが複雑に絡み合う話ではあるが、最初に挙げるのは「中部圏において水素の大規模利用の可能性を検討する『中部圏水素利用協議会』を立ち上げ」というリリースだ。

 ご存じの通り、脱CO2にはいくつかのアプローチがあり、電気を使うもの、水素を使うもの、バイオ燃料を使うものあたりが有力だ。今の時点でリードしているのは電気だが、エネルギーというのは歴史上、何時の時代もミックスして使われてきた。過去に学べばどれか一つだけでOKとはならない。

 さて、水素には、現状まだいろいろと課題がある。化石燃料の改質によって作られるという製造時の問題、高圧圧縮しないと輸送や積載に問題が生じ、その圧縮時に大量のエネルギーが必要とされる問題、分子が小さく透過しやすいことから保管が難しい問題などだ。もう一つ大事なのは、インフラの充実と水素の消費拡大が卵と鶏の関係になっていて、どちらも先に進まない。このあたり水素の可能性については過去に書いた記事を参照して欲しい。

 しかしながら、水素には水素に適した用途があるはずだし、現状課題とされる問題も技術的に解決される可能性はある。そういう問題を多くの企業が連携しつつクリアしていこうとするのが今回の取り組みだ。参加企業は以下の通り。

協議会 参画企業

  • 出光興産
  • 岩谷産業
  • JXTGエネルギー
  • 住友商事*
  • 中部電力
  • 東邦ガス
  • トヨタ自動車*
  • 日本エア・リキード合同会社
  • 三井住友銀行*
  • 三菱ケミカル

※2020年3月6日協議会設立時点。50音順。*は事務局。

 当面の目標として「2030年に水素利用量年間30万トン」を目指して、水素の利用への社会実装実験を開始する。具体的な検討内容は以下の通りだ。

  • 海外からの水素大規模輸送が始まることを想定した、中部圏での水素受入拠点から需要サイドまでのサプライチェーンの検討
  • 発電・石油産業等の各製造業の企業活動やモビリティでの利用など、中部圏全体での水素利用量のポテンシャルの試算
  • 各々の需要サイドで受け入れ可能な水素コストの検討
  • 実現に向けた技術面・金融面・制度面での課題を整理し、必要な施策と社会実装につながる事業モデルを提案

 そうした中で、トヨタそのものは何を進めていこうとしているのか?

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