クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

船からトラックまで 水素ラッシュを進めるトヨタ池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

» 2020年04月06日 07時15分 公開
[池田直渡ITmedia]

燃料電池大型トラック

 FCVの普及において最も適性が高いと目されてきたのが大型トラックだ。重量物を積載して長距離を走る大型トラックは、必要とするエネルギーの総量が大きく、電気自動車(BEV)ではバッテリーが重すぎ、かつ充電時間が長くなりすぎる。

 一方で走行距離が長いため、内燃機関では環境負荷が大きく、何らかの新技術によって長距離大型トラックの環境負荷を下げることはCO2削減プロジェクトにとって重要な課題である。

 トヨタは日野と協同で燃料電池大型トラックを開発することを発表した。ベースとなるのは総重量25tの日野の大型トラック、プロフィアで、新型MIRAI用のFCスタックを2基搭載する。

日野プロフィアをベースに、MIRAI用FCスタックを2基搭載するゼロエミッション大型トラック

 大型トラックの任務は基本的にターミナル間の輸送であり、乗用車のように経路のあちこちで燃料補給拠点がないと困るということは起こらない。ターミナルにあれば事足りる。また、稼働台数もばらつきがなく、あらかじめ分かっているため、補給拠点への燃料デリバリーも計画しやすい。運転するのも整備するのも、燃料を充填(じゅうてん)するのもプロであり、充填作業が多少難しくてもリスクが低い。

 またラダーフレームを持つ構造上、床下に大型のタンクを備えるスペースはいくらでもあり、必要な航続距離に見合ったタンクを増設することも容易だ。十分な航続距離と積載量に見合うパワー、短時間でのエネルギー補給が求められるという点で、燃料電池は高い適性を持っているのだ。

 そしてこれらの大型トラックに採用されるFCスタックは、専用設計する必要がない。MIRAIのFCスタックを複数搭載すればよい。つまりMIRAI用の燃料スタックは、乗用車だけでなく、フォークリフトだろうが、長距離トラックだろうが、船舶であろうが、据え置き型の発電機であろうが、わずかな改造でどれにでも使える汎用パワーソースなので、利用範囲を広げれば広げるほどコスト的にも有利になる。

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