軽減税率で優遇される「新聞」が今こそやるべき、新型コロナ情報の“無料化”世界を読み解くニュース・サロン(3/6 ページ)

» 2020年04月09日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

“公益性”で優遇を受ける新聞社が「正しい情報」を提供すべき

 カナダ国民が直面している未曾有の敵を前にして、不安が覆う閉塞感のある社会で、信頼できる情報を無料で提供して国民のために貢献しようというのである。「フェイクニュースだ」「陰謀論だ」「デマだ」などと批判されるような情報があふれている中で、確かに今ほど信頼のおけるニュースや情報が求められている時はない。長年、カナダのジャーナリズム分野で一線を走ってきたメディアが思い切った試みを始めたのである。

 これは同紙にとっても、長い目で見ると価値のある動きだといえる。より多くの人に同紙の記事を読んでもらうきっかけになるし、同紙を読む習慣をつけてもらえるかもしれない。そして何よりも、公益性を重視する新聞であるというイメージが広まる。それは読者からの信頼にもつながっていく。非常に効果的な取り組みだ。

 日本にも、いくつもの全国紙がある。日本の新聞ももちろんかなりの公益性がある。事実、そのために2019年10月に消費税が10%に増税された際には、日本政府が特別に新聞社を「日常生活に密着している」として、増税の適応から除外する措置を取った(定期購読が対象、電子版は対象外)。「生活する上で必須」な特定商品として軽減税率の対象にしている。

 そして日本でも、今回の新型コロナウイルスに関してフェイクニュースやデマなどがいろいろと報告されているのは周知の通りだ。ならば、公益性があり、生活に密着しているからと税金で優遇を受けている新聞社は、公益性にかなった正しい情報を、カナダにならって今こそ無料で提供してはどうだろうか。そうすれば、数多くいる記者などが取材してきた情報や、政府が新聞記者たちの属する記者クラブに優先的に提供する情報を、信頼できる情報として正確に国民に伝えることができる。

 感染拡大の影響でビジネスがストップして、新聞代を払うことができなくなったような人たちに、正しい情報を提供する使命が新聞社にはあるともいえる。優遇されて浮いた税金はそこに当てればいい。

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