「人材サービス」に潜む危うさと罪 今後も社会に必要な存在であるために求められるものとは連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(5/5 ページ)

» 2020年04月17日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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「人材サービス」に必要な“資格”とは

 「人材サービス」の起源にある種のいかがわしさが付きまとったのは、見えない“支配力”による不健全さを自ら正すことができなかった過ちの結果でもあると考えます。そこに法制度による“縛り”を設けることで健全性を確保できるようになり、「人材サービス」は社会的認知を少しずつ得られるようになってきました。

 それでも今なお、いびつな形で法制度の縛りを受けている面があると感じてしまうのは、「身から出たサビ」といえる面が多分にあります。「人材サービス」が有する機能を社会のためにより有効な形で役立てるために、“適切”な規制は必要だと思います。そして適切な規制を実現させるためには、「人材サービス」を提供したり利用したりする際に自浄作用を働かせ、自らの力で健全に発展させていけるようになることが不可欠です。

 それは、「人材サービス」という、取り扱いの難しいサービスを利用する者に必要な“資格”と言い換えても良いかもしれません。「人材サービス」が有する機能を社会に役立てるとは、すなわち「人材サービス」を用いて公益に資するということです。

 ただ利益だけを求め、「人材サービス」を利益獲得のための道具としか見なさないようだと、“公益性”からはどんどん離れていくはずです。逆に、「人材サービス」を通して求人企業と求職者双方のニーズを満たし、社会により良い選択肢を提供することを目的とし、利益をそのための道具と見なすのであれば、それは公益に資することにつながるはずです。

 「人材サービス」が滅ぶ日が来るかどうかは、「人材サービス」に携わる者が、“公益性”ありきに徹することができるか否かに委ねられているのだと考えます。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業。テンプスタッフ株式会社(当時)、業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て2010年株式会社ビースタイル入社 。2011年より現職 (2020年からビースタイル ホールディングス) 。複数社に渡って、事業現場から管理部門までを統括。しゅふJOB総研では、のべ3万人以上の“働く主婦層”の声を調査・分析。 『ヒトラボ』『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰。NHK『あさイチ』など、メディア出演・コメント多数。 厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。 男女の双子を含む4児の父。


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