2019年に波紋を呼んだ、就活サイトの内定辞退率予測問題。背景には、企業と求職者の間に立ちながら、自らの利益も追い求める民間業者ならではのジレンマが潜んでいます。人手不足で労働市場が活況を帯びる中、人材サービスの存在意義はどこにあり、何が課題なのか? という問いを新卒、転職、派遣の3つから分析します
「人材サービス」が有する“機能”にフォーカスしたとき、どんな存在意義があり、何が課題なのか。これまで当連載では、求職者側から見たニーズの違いから特徴的なキーワード、「転職」「新卒」「派遣」の3つを挙げて考察してきました。
【プロローグ】人材サービスが“社会の敵”にならないために 運営側、企業側、求職者全てが知っておくべき基本事項
【転職編】活況の“転職市場”を支える「人材サービス」 企業が知るべきことと事業者が心掛けるべきこと
【新卒編】新卒向けサービスが多様化してもなぜ、「3年以内離職率」はずっと3割なのか
【派遣編】「人材派遣」は“不遇な働き方”は本当か? データと資料が解き明かす、知られざる実態と課題
考察に当たっては、多岐に及ぶ人材サービスの中でも民間事業者が提供する労働力需給調整機能に絞ることとし、カッコ書きで「人材サービス」と表記してきました。
日本における「人材サービス」の起源は、江戸時代にまでさかのぼると言われます。学識者の方々がさまざまな研究をされていますが、決して社会的に良いイメージではなかったことが伺えます。口入れ屋、手配師、人身売買……こうした言葉が並びます。
明治時代以降に法律が制定されても、「雇用」なのか「請負」なのか曖昧な契約形態の中で、人と仕事とを仲介する「労働者供給」と呼ばれる事業が行われてきたようです。労働者供給事業が法律で厳しく取り締まられるようになったのは、1947年に職業安定法が制定されてからだと言われます。
当連載は、「人材サービス」が有するサービスとしての“機能”にフォーカスして存在意義と課題について考察することをテーマにしているため法制度の詳細を深堀りしませんが、労働者供給事業が厳しく規制される背景には、供給元と労働者との間にある不健全な支配関係の存在があることは押さえておく必要があると思います。
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