京王電鉄の決算ではこのように書かれている。「米中貿易摩擦や相次ぐ自然災害の発生、消費税率引き上げなどの影響により、先行き不透明な状況が続きました」。新型コロナによる危機が表面化する前から、京王電鉄は経済状況に危機感を抱いていたのだ。
悲観的な見方に、さらに追い打ちはかけられた。新型コロナの感染拡大により、景気の先行きは厳しいものとなった。連結営業収益は3.1%減、連結営業利益は10.1%減、連結経常利益は11.7%減、純利益は34.3%減となっている。私鉄はグループ全体がシナジー効果をもってビジネスに取り組むのが基本スタイルなので、グループごとに見ていこう。
運輸業は9.3%減となった。京王線の笹塚〜仙川間の連続立体交差事業について準備工事を進めたり、19年のラグビーワールドカップに向けて安全輸送を確保したり、また「京王ライナー」の車両増備などを行った。さらに、相模原線の加算運賃の値下げやダイヤの改正などで利便性を高めたものの、結果としてそこで積み重ねたものを吹き飛ばした格好となっている。鉄道の輸送人員は0.8%減、旅客運輸収入は1.9%減となっている。
流通業は14.4%減少と、大幅な減益となっている。消費税率の引き上げのほかに、新型コロナによる訪日外国人客の減少や、外出自粛が響いている。一方で、京王ストアなどで衛生用品や食料品の売上増も見られたが、グループ全体に貢献するほどのものではない。
不動産業の営業利益は2.5%減と、なんとか最小限にとどめた感じだ。問題なのは、レジャー・サービス業。ホテルのリニューアルなどで誘客に力を入れたものの、営業利益は37.8%減と大幅に落ち込んだ。宿泊および宴会などの需要が減少したのが大きい。
その他の事業では9.7%増。ビル管理や車両整備の受注が増加。太陽光発電事業も行っている。さまざまな挑戦を行ったものの、そこで得られたものを新型コロナが吹き飛ばした決算である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング