――「MOMO5号機」の打ち上げは、企業8社と個人1人のスポンサーが支援しています。2019年の秋には漫画「宇宙兄弟」とコラボレーションをしてMOMO5号機のクラウドファンディングも実施していましたが、今回の打ち上げについての収支はどのようになっているのでしょうか。
稲川:個別の金額については答えづらいところもありますが、5号機の打ち上げは基本的にはビジネスにしようと考えています。「MOMO」シリーズは打ち上げコストが5000万円程度ですが、スポンサー収入やペイロードのお客さまからいただく収入、クラウドファンディングによってプラスになるように考えています。打ち上げが延期になって、追加のコストもかかっていますが、それでもなんとかビジネスに乗るように進めています。
よく知らない人からは、「ホリエモンの趣味で打ち上げている」というようなことを言われますけれども、そんなことはありません(笑)。みんなの思いが乗っていて、ビジネスという文脈で事業を進めていることは、もっと知っていただきたいですね。
――これまでの開発には、どれくらいの費用がかかっているのでしょうか。
稲川:ISTが2013年に立ち上がってから、「宇宙品質にシフト MOMO3号機」までにかかっている費用は約10億円です。この金額は機体の開発だけでなく、人件費や工場を建てる、射場を整備するといった全ての開発費を含んでいます。こういう費用を回収できるような事業にするつもりですし、十分可能だと思っています。
――「MOMO」のスポンサー収入は、機体に企業のロゴを掲載するといった機体広告と、宇宙空間に物を運ぶペイロードが柱になっていると思います。5号機のペイロードでは、音の伝わり方を測定するための装置や、小型ロケット用航法センサーという宇宙事業に関連するものを運ぶ一方、日本酒やコーヒーなど企業のPRを目的としたさまざまな物も運びます。3号機ではハンバーグを宇宙に運んでいますよね。このようなPRにもニーズがあると感じていますか。
稲川:5号機では日本酒を燃料に混ぜるほか、コーヒーや水タバコのフレーバーを運ぶ予定です。地上ではロケットの火力でお菓子を焼くことも予定しています。知名度を上げる、宇宙への関心を高めるといった意味のニーズはありますね。お菓子を焼くといったギャグのようなことは、国が打ち上げるロケットでは絶対にできないことですから。問い合わせも増えてきています。
こうした需要は、最初は全くないだろうと思われていました。新しい需要を作ったことは「MOMO」の1つの価値だと思っています。ペイロードによって収入が増えていくと同時に、打ち上げの実績が積み上がっていけば、次第に国や大学も動き始めると思います。
実際に、大学の関係者ともコミュニケーションはとっています。やりたいけど予算がないからできないと話す方が多いです。それが、科研費として認められたり、国の事業に採択されたりすれば、研究者の需要に応えることができます。これはスキームをどう作るかの話なので、宇宙産業を盛り立てる意味でも国が中心となってスキームを考えていただいて、「MOMO」を使ってもらえればと思いますね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング