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「ブランク」や「ドロップアウト」は無意味ではない いま見直すべき、「採用の常識」とは?「能力適合型社会」から「能力発見型社会」へ(2/5 ページ)

» 2020年05月14日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

ドロップアウトとブランク

 同級生たちが大学生活を謳歌する中で社会の流れから取り残され、世の中がバブルの狂騒から崩壊へと移り変わっていくのをひとごとのように裏側から見ている。心に大きな穴のようなものが空いていたあの感覚は、30年近くたった今でも鮮明です。

 こうした期間を経て、筆者が大学に進むことができたのは、当時まだ珍しかった自己推薦入試のおかげです。論文と面接だけで自分が志望する学科を受験できる大学を見つけ、運よくそこが母校となりました。1次選考の自己推薦論文では、自身が社会の裏側から見た2年間に感じた率直な気持ちを書きました。私が世間からドロップアウトしていた期間の中に可能性を見いだしてくださった先生方のおかげで、人生を一歩前に進めることができました。その後、筆者は大学を卒業し、就職します。

 当時はまだ「寿退社」という言葉が残っており、女性がキャリアを形成するにはまだ難しい時代でした。寿退社が一般的だった時代の女性社員に求められていたのは、“女の子”として男性社員をサポートし、「良き花嫁候補」になることです。

 そんな中、筆者が入社した会社は、創業社長が女性で社員も7割が女性。大半は中途入社で、前職で“女の子”扱いされたことに強い反発心を持っている人がほとんどでした。「性別で役割を分けられるのではなく、仕事の実力で勝負したい」という思いを持った先輩女性たちの価値観は、当時の社会では特異だったはずです。そんな思いを持つ女性たちを“女の子”という色眼鏡で見るのではなく、能力を見いだして活躍の場を提供することでその会社自身も成長していきました。

 社会はその時代に求められる能力に適合する人に着目し、適合しない人をドロップアウトと見なし、また適合しない期間を“ブランク”と見なします。そのため、人は社会が求める能力に適合するように自分を変えようとします。それはある意味「合理的」なシステムですが、その反面、個性を伸ばしにくく窮屈でもあります。

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