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「監視」や「名ばかり管理職」はもういらない 「ニューノーマルのテレワーク」に必要なものとは?「感染対策」にとどめず成果へ結び付けるために(2/4 ページ)

» 2020年06月04日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

監視システムはテレワークを骨抜きにする

 結論から申し上げると、この手の“監視システム”の導入は全くナンセンスです。なぜならテレワーク導入の本質的な目的は、この先わが国で深刻化するであろう少子化問題への対応策として、従来の正社員的時間管理ではない労務管理の実現によりワークシェアリングを広げていく、ということにあるからです。

 ワークシェアリングとは、「労働者個々の労働時間短縮を行い、仕事を分かち合うこと(転じて労働力を分かち合う意を含む)」です。すなわち、ワークシェアリングにより時間管理から解き放たれた労働力を、自社以外の仕事の請負に振り向けることによって、少子化で減少する労働力を社会全体で効率的に有効活用する、ということがそもそもの目的なのです(主婦の家事専業からの解放も、この範ちゅうにあります)。テレワークを導入しながらもこれまで通り時間管理を原則としていたのではワークシェアリングにはつながらないわけで、テレワーク導入の意味がなくなってしまうのです。

 そこで問題になるのが時間管理から脱却して何を管理するのかですが、時間拘束がなくなるなら当然、成果を管理するという方向に行き着くことになります。言葉で言うのはたやすいですが、実はここがテレワーク導入の一番の難所です。何より問題なのは、「適切な成果目標を設定できるのか」「その達成度合いを正当に評価できるのか」という点です。裏を返せば、成果管理は管理者の資質が問われるということであり、ここが欠けてしまうと管理される側のモチベーションが著しく下がってしまいます。少なくとも、中小企業にありがちな、「名だけ部長」「名だけ課長」は今後通用しなくなるのです。

「名ばかり管理職」はもう不要(出所:ゲッティイメージズ)

社内外に「ファン」をつくることも重要

 もう一つ、テレワーク化を進めていく中で注意しなくてはいけないことがあります。組織的にテレワーク化を進め在宅あるいはSOHOでの執務比率が高まることの当然の帰結点として、「社員の個人主義」が強くなるということです。そしてそれは、組織への帰属意識を希薄化させる可能性があるということでもあります。すなわちテレワーク化の進展は、離職率の上昇という形で組織運営にダメージを与えるリスクをはらんでいるわけであり、せっかくテレワーク化を進めても優秀な人材が失われてしまっては、結果的に企業にとっては損失の方が大きくなってしまいかねないのです。

 それを防止する表向きの要因は先に述べた成果の正当な評価にあるわけですが、根源的なことを申し上げれば、いかにして魅力ある経営を実現するかということに集約されます。すなわち、テレワーク化の進展によって希薄になる会社とのリアルでのつながりを、精神的な面でいかに埋め合わせをして求心力を持たせるかなのです。そのためには、一般に経営理念として表される自社の存在価値や社会的存在意義をしっかりと固め、それを社員と共有した上で魅力的な経営ビジョンを提示するということが不可欠になるでしょう。テレワークによる業務オンライン化の進展では、対顧客におけるEC化の進展と同じく、ステークホルダーの自社に対するファン化を意識して進めることが不可欠になるのです。

社内外にファンを増やそう(出所:ゲッティイメージズ)

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