米国株、若者に人気 楽天証券では投資家が数倍以上に(2/3 ページ)

» 2020年06月19日 00時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

最低手数料撤廃、スマホアプリの米国株対応が効果

 背景には2つの要因がある。1つは、2019年7月に行った米国株取引の最低手数料の撤廃だ。従来は最低手数料が5ドルに設定されており、少額の取引では手数料が重しになってしまっていた。オンライン証券各社は相次いで最低手数料を引き下げ、連日に渡る引き下げ合戦の結果、口火を切ったマネックス証券をはじめ、楽天証券、SBI証券ともに最低手数料を撤廃した(19年7月の記事参照)。

 この結果、1注文あたりの取引額は急速に下落し小口化。楽天証券では平均して半額程度まで減少した。

 もう一つは、楽天証券のスマホアプリ「iSPEED」の米国株対応だ。これによって初めて、アプリから企業情報を確認したり注文したり、保有株式を確認することが可能になった(20年3月の記事参照)。紙田氏によると「初めて米国株を取引する人の半数以上がiSPEEDから」だという。

iSPEEDで米国株Amazonを表示したところ。売買も可能だ

在宅勤務によって米ハイテクIT企業に注目 ブロガー効果も

 金融資産が相対的に小さい若年層では、少額から取引できる商品を求める声が、従来から強かった。仮想通貨を取引するのは若年層が多いが、その理由も「少額から取引できること」を挙げる人が多い(GMOコインの顧客アンケート参照)。ネックだった最低手数料が撤廃されたことで、少額の投資先を求める若年層が米国株に流入した形だ。

 ただし理由はそれだけではない。これまで日本株に比べて米国株は情報が少ないために敬遠される傾向にあった。「よく知らない企業には投資したくない」と、個人投資家の多くは話す。ところが、特に若年層は、日本の大企業並みに米国ハイテク企業を身近に感じている。ビデオ会議のZoomや、ウーバー・イーツを運営するUberなど、コロナ禍で話題になった企業も多い。

 「いまの若年層は、Google、Amazon、Apple、Facebookという企業と生活を共にするようになってきている。これが若年層の米国株投資拡大に寄与している」(楽天証券 株式・デリバティブ事業部の横沢厳美部長)

 オンライン証券各社は米国株に特化したセミナーなども行っており、地道に啓蒙を続けてきた成果も出ている。最近では、楽天証券が開催する米国株セミナーは、すぐに席がうまるほど活況だという。

 若年層投資家の間で、インターネットから投資情報を収集する人が増えているのも影響している。「米国株を取り上げるブロガーも出てきている。その影響か、ETFや高配当銘柄がよく取引されている。ETFでは、高配当ETFのSPYDや、S&P500指数に連動するSPY、VOOの取引が多い」(紙田氏)

 とはいえ、日本株に比べると財務情報一つとっても米国株の情報がまだ少ないのも事実だ。マネックス証券は、先駆けて米国株の財務情報や、スクリーニングが可能なツールの提供を始めており、楽天証券でも「スクリーニングの機能など、情報配信系の機能にも、もっと力を入れていかなければいけない」(横沢氏)としている。

マネックス証券が提供を始めた米国株情報サービス「銘柄スカウター」

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