「としまえん売却」と「GAFAMの東証一部超え」から見えるコロナ後の世界専門家のイロメガネ(3/6 ページ)

» 2020年07月14日 07時25分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

GAFAMが東証一部を上回った理由

 GAFAMの時価総額の合計は、東証一部上場企業の全体と同じく550兆円程度。冒頭でも触れた通り、たった5社でなぜこれほどの規模になるのか? それはインターネットが、国境のない「新大陸の土地」であり、この「もう一つの世界」を、ごく一部の企業がほぼ制圧したことによるものだ。そのように考えればある意味で当然の結果ともいえる。

 かつて不動産バブルの絶頂期には、”東京の土地だけで米国全体の土地が買える”というのならともかく、”いや山手線の内側の土地だけで米国が買える”といった話まであった。しかし今となっては、まるでその裏返しであるかのように、米国を代表するIT企業たった5社の時価総額で、日本の東証一部上場企業が買える状況になった。

 戦後の都市開発を担った私鉄各社は、ターミナル駅からから線路を引き、住宅、商業施設、娯楽施設とまるでシムシティのように都市開発を進めた。

 これは戦後の高度経済成長期からバブル期までの間、確実にもうかった鉄板のビジネスモデルであり、その象徴が西武グループとそのトップで世界一の富豪の座に何度も輝いた堤義明氏だった。しかし現在、世界一の富豪の座に座るのはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、あるいはアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏だ。

 私鉄各社が制圧した土地は日本のごく一部だが、5社が制圧したのはインターネット上にあるSNS、検索と広告、パソコンのOS、イーコマース、携帯端末と、新大陸でも特に重要な拠点で、要所といえる大部分だ。

 私鉄各社のビジネスが極めて似通っていたように、これら5社もそれぞれ得意分野や売り上げに占める割合は異なるものの、ネット広告、検索、OS、SNS、携帯端末など似通ったビジネスを展開している。そしていずれもまだ拡大する余地が極めて大きい。

 世界一の富豪の座が堤義明氏からIT企業の創業者に取って代わられた理由も、手がけるビジネスそのものの天井の有無であり、それが時価総額に反映された形だ。

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