前編、中編に続き、最後は日産が騒動にかけた200億円以上というコストと、検察の推定有罪かつ不可思議な行動についてまとめておく。
ゴーン氏がレバノンやブラジルで自宅を買ったことなどはすでに多数報じられているが、ほかにも妻の経営するお店を社員に手伝わせた、仕入れ費用を日産が負担していたなど、事実関係は不明なもののセコイ話が多数出ている。
東京拘置所を去るゴーン氏(写真 ロイター)
このような不適切な支出はガバナンス上許されるものではないが、ゴーン氏が逮捕され、西川廣人氏が不正な報酬授受で退任した後も、極めて疑問の残る支出が発生している。「ゴーン騒動」に日産が払ったコストだ。
ブルームバーグによれば、一連のトラブルに対応する費用は2億ドルにも上るという。
複数の関係者が匿名を条件に、日産がゴーン被告や金融商品取引法違反の罪で起訴されたグレッグ・ケリー元代表取締役による不正行為の調査に、弁護士や調査員、警備担当者の費用なども合わせて計2億ドル(217億円)以上を費やしていることを明らかにした。
ゴーン被告きょう会見、午後10時−日産との攻防に新たな幕開けか ブルームバーグ 2020/01/08
日産のスタンスはゴーン、ケリーの両名にこのトラブルの責任がある、ということなので、この支出の責任も全てゴーン、ケリーの両名にある、ということなのだろう。ただ、これだけ巨額な支出は適正といえるのか? 日産は金額と使途を株主に対して明らかにする必要がある。
200億円を超える費用の内訳は不明だが、保釈中のゴーン氏を監視するコストも含まれているのだろう。
逃亡事件の直前には弁護人が、ゴーン氏を監視・尾行していた警備会社に対して、違法行為だから辞めなければ訴えると警告をしたという。これは日産が雇っていた人物だ。
報酬5億円でゴーンの暴走を放置した西川前社長の責任(中編)
メディアでは一斉にゴーン批判の嵐が巻き起こったが、仮に暴走していたのであればそれをとめる役目を負うのは役員であり、その最高責任者は日産の代表取締役社長兼CEOの西川氏にほかならない。ゴーン氏が犯罪を行って逮捕・起訴されたのであれば、西川氏もセットで逮捕されるべきで、西川氏が逮捕されないのであればゴーン氏の逮捕もあり得ないはずだ。
ゴーン国外逃亡で考える、日産前社長の西川氏が逮捕されない理由と検察の劣化(前編)
ゴーン氏の会見後も毎日のように新しい動きが報じられたが、そもそもの発端を理解している人は少ないだろう。世間では「給料をごまかして逮捕された挙句に国外逃亡したとんでもないヤツ」と認識されていると思うが、実際はそのような単純な話ではない。なぜゴーン氏が国外逃亡を選んだのか、なぜ西川氏と検察もまた問題があると断言できるのか、複雑に絡んだ事件を整理してみたい。
ゴーン氏が「悪者」で西川社長が「男らしい」というおかしな風潮 後編
ゴーン氏逮捕については、センセーショナルな事件であったことや、私的流用や公私混同の話がゴシップネタとして面白おかしく報じられたことから、ゴーン氏一人が注目を集める格好となった。しかし企業としての責任にフォーカスすると、どう見えるだろうか?
ゴーン氏が「悪者」で西川社長が「男らしい」というおかしな風潮 前編
ゴーン氏逮捕の真実は今後明らかにされていくだろうが、私的流用が多々あったことは間違いなさそうだ。しかし、そのような振る舞いをとめることができなかった役員にも責任がある。西川氏らほかの役員の責任はどう捉えたらいいのだろうか?
「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」 ゴーン氏の逆襲をナメてはいけない
カルロス・ゴーン氏が、会見を開く予定だ。「大丈夫でしょ。悪いのは彼なんだし」「すぐに逮捕して、日本に戻せ」といった声が聞こえてきそうが、大きな声をあげればあげるほど、日本にダメージを及ぼすリスクがあるのだ。どういうことかというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.