ただ、これもケースバイケースだ。なぜなら他の会社では作れないパーツを作っていた場合、取引自体は問題だとはいえない。利益相反ではあっても直ちに違法とはいえない状況があった場合にはどうすればいいか。答えは簡単で株主が判断すればいいということになる。
株主に情報を開示して、このパーツ会社はゴーン氏の経営する会社で利益相反が発生するが、他の会社では作れないパーツであるため妥当な水準でしっかり価格を交渉した上で取引をします、と有価証券報告書で明示すればいい。これはコーポーレートガバナンスコード(企業統治に関するルール)で定められている。
コーポレートガバナンス・コードの大きな特徴の一つは「順守か説明か(comply or explain)」と呼ばれるソフトローであることです。全ての原則に対する順守義務はなく、なぜ順守しないかを説明すればよい、というものです。杓子定規な捉え方ではなく、経営者が自らの経営内容を投資家に分かりやすく説明することが不可欠です。
コンプライ・オア・エクスプレイン、順守か説明か、とあるように、ガバナンスの観点から利益相反取引はしない方がいいが、もしするのであればキッチリと株主等に説明するように、と定められている。当然、違法行為をしていいなどという話ではないが、ある程度の裁量が認められていることになる。つまりは経営判断だ。
2つのケースは知人が取引相手の上に自身の判断で支払いをしたため、余計に誤解を生じさせた状況であることは間違いない。しかし、それが直ちに違法といえるかどうか? ということだ。経営判断の観点からこれが最善なのであれば、仮にこの取引でゴーン氏が利益を得ていたとしても、株主に判断をしてもらえればいいというケースも有り得るからだ。
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「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」 ゴーン氏の逆襲をナメてはいけないCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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