「新人は白シャツ」「ツーブロック禁止」 会社や学校で、“謎ルール”が存在している事情スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2020年07月21日 09時37分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ツーブロックフィルター」が発動していた可能性

 では、要点を整理しよう。

 いわゆる「半グレ」が注目を集めた10年代前半、日本のおじさんたちの間で、「ツーブロック」という髪型は「不良」「粋がった若者」といったイメージが急速に広がった。そこで現れたのが、「ビジネスシーンのツーブロック禁止」という「謎ルール」だ。

 もちろん、明確に「ツーブロック禁止」をうたうような会社はないが、採用試験の「学歴フィルター」などと同様に、ビミョーなジャッジの際に、ツーブロック学生が弾かれる「ツーブロックフィルター」が発動していた可能性は高い。

 もし半グレ的な若者を入社させて後々トラブルにでもなったら、「なんであんな悪っぽいのを合格にしたのだ」と採用担当者の責任が追及されてしまうからだ。つまり、「ツーブロック禁止」という「謎ルール」は、組織の秩序を乱すヤンチャな若者を採用してしまうことを防ぐとともに、その「予備軍」に対して「バカな真似をするなよ」と頭を押さえつける「矯正教育」の役割を果たしているのだ。

 東京都の公立高校における「ツーブロック禁止」も、実はまったく同じ役割を果たしている。

 「平成30年度における児童・生徒の問題行動・不登校等の実態について」によれば、東京都の公立中学校の平成30年度の暴力行為は1593件、前年の1438件よりも増えてきている。また「いじめ」も右肩あがりで、平成28年度は4029件だったものが、平成30年度は6482件と3年で1.6倍。さらに、不登校出現率も平成24年度の2.76%から右肩あがりで平成30年度には4.33%にまでなっている。

暴力行為発生件数推移(出典:東京都教育委員会)

 このような「組織の秩序を乱す問題児」が増えてきている実態を見て、公立高校の教育者はどう思うだろうか。問題児になるべく来てほしくない。問題児になりそうな生意気な生徒をガツンとやって大人しくさせたい。そう思うはずだ。そこで生まれたのが「ツーブロック禁止」ではなかったか。

いじめ認知件数の推移(出典:東京都教育委員会)

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