「新人は白シャツ」「ツーブロック禁止」 会社や学校で、“謎ルール”が存在している事情スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2020年07月21日 09時37分 公開
[窪田順生ITmedia]

「謎ルール」のおかげで立派な社会人に

 髪型と素行は何の関係もないが、このような理不尽なルールを押し付けることで、大人の命令に文句を言わず素直に従う「羊」のような学生をつくることができる。そういう秩序維持ができれば、とりあえず教育者の立場と面子は守られるというわけだ。

 もちろん、やっている本人たちはそんなつもりはまったくない。東京都教育委員会が「事件や事故に遭わないため」とドヤ顔したように、日本のおじさんの多くは、理不尽なルールで若者の自由を制限することは「立派な教育」だと自己正当化する。なぜかというと、自分たちもかつてはそのような「謎ルール」を押し付けられた経験があり、その「謎ルール」のおかげで立派な社会人になれた部分もあると考えているからだ。

 分かりやすいのが、日本中の学校で当たり前のように行われる「前ならえ」や「気をつけ」だ。

 ご存じのように、これは兵隊に叩き込む軍隊的所作で、学校の授業に取り入れている国は北朝鮮などを除いてほとんどない。クラス全体でマスゲームのように一糸乱れぬ動きをするのは、学校教育とまったく関係がない、というのが世界の常識なのだ。

 しかし、日本では極めて大事な教育とされる。なぜこういうおかしな現象が起きたのかというと、先ほど触れた「自分が経験したことは、子どもたちにやらせるべきだ」という思い込みだ。実は終戦から60年代くらいまでの子どもは「気をつけ」「前ならえ」などしていない。戦前の軍隊教育が否定され、米国などの学校と同様に、子どもが軍隊の真似事をしなくて済んでいたのだ。

 だが、喉元過ぎればなんとやらで、戦後が遠くなっていくにつれて「これは子どものためによくない」と騒ぐおじさんたちが増えていったのである。

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