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» 2020年07月25日 09時00分 公開

悪と欲望から斬る行動経済学:サラダマックが大失敗した訳――「データの奇麗なウソ」をマーケッターはなぜ妄信するのか (1/4)

かつてマクドナルドのサラダマックは大失敗。一見、消費者調査を踏まえた商品だった。「データの奇麗事」に騙されないコツを筆者が解説。

[松本健太郎,ITmedia]

編集部からのお知らせ:

本記事は『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(著・松本健太郎、毎日新聞出版)の中から一部抜粋し、転載したものです。データサイエンティストの筆者が看破した、消費者行動をデータで読み解く上で陥りがちな「きれいごとの罠」についてお読みください。


 2006年5月、マクドナルドから新メニュー「サラダマック」が登場しました。

 当時のプレスリリースには「体によいことをムリせず楽しく続け、バランスのいい生活を応援するマクドナルドからの新しい提案として、野菜と果物を使ったカラダにやさしい5種類の新メニュー『サラダマック』を、2006年5月13日(土)から全国のマクドナルドで発売いたします」と記載されています。

photo 「きれいなデータのウソ」にマーケッターはなぜ惑わされる?(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

データは「ウソ」にまみれている

 「サラダマック」誕生のキッカケは、お客様の声を聞く調査だったと言われています。「ヘルシーなサラダが食べたい」「ヘルシーじゃないからマクドナルドには行きません」という意見を聞いた商品開発のメンバーは、ヘルシーを具現化しつつ、あくまでマクドナルドらしいサラダとして「サラダマック」を開発しました。

 しかし、サラダマックは期待に反してほとんど売れず、あえなく販売終了となります。でも「サラダが食べたい」と言ったのは「お客様」だったはず。なのに、その「お客様」が全く買ってくれなかったのは一体なぜでしょうか。

 データは事実ですが、真実とは限りません。意味を読み取らなければ、データは何の役にも立たないのです。

 筆者はデータサイエンティストとしてデータを分析する案件に何度も従事してきました。案件の度にデータに騙(だま)され、時には作業がやり直しになったりクライアントにしかられたりして、その都度心から血を流してきました。そうした経験をふまえてデータは非常に胡散くさい存在だと思っており、妄信すると痛い目に遭うと考えています。

 特に人間を相手にデータを計測するなら、なおさら慎重に「意味」を読み取らなければならないでしょう。少しでも自分を良く見せたいという願望が働いて、騙(だま)すつもりのない「キレイなウソ」をつく場合さえあります。

 そうした「ウソ」にまみれた胡散くさいデータを分析するには、定義をしっかり固めたうえで、きちんと計測することが必要です。もっとも、その準備には膨大な時間がかかりますし、そもそもデータのウソを見抜くには労力だけでなくセンスも必要で、なかなか難しい作業です。

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