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» 2020年07月25日 09時00分 公開

悪と欲望から斬る行動経済学:サラダマックが大失敗した訳――「データの奇麗なウソ」をマーケッターはなぜ妄信するのか (2/4)

[松本健太郎,ITmedia]

大ヒットのカギは「背徳感」

 多くのデータは不完全であり、事実・事象・事物・過程・着想などのうち、ごく一部をかろうじて表現しているに過ぎません。こうしたデータをもとに判断していると、誤った結論に導かれる可能性があります。

 そこで重要になるのが、洞察力です。

 優れたマーケッターほど対象物を深く観察し、本質を鋭く見抜き、データから欠落した内容を推論によって埋め、仮説を立てて検証し、正しい結論を導きます。

photo 「データから欠落した内容」にマーケッターはどう迫るべきか(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 先ほど紹介したサラダマックが売れなかった原因について改めて考えてみましょう。

 お客様は「ヘルシーなサラダが食べたい」と語っていますが、これが「キレイなウソ」かもしれないと「洞察」しなければいけなかったのです。例えば、次のように推論することができたはずです。

 「みんな、口ではヘルシーとかサラダとか言っているけど、本当にそう思っているのかな?」

 「体によいことを楽しみたい、バランスのいい生活を送りたいと言っているけど、そんな枯れたお年寄りみたいな発想、20代が本当に考えるかな?」

 このように洞察できる人は、データだけでなく、そのデータの源たる「人間」にもきちんと目を向けていると言えるでしょう。

 お客様の中には、本心から「ヘルシーがいい」と思っている人もいるかもしれません。しかし「人間」を洞察していれば、気持ちの半分は「世の中の流行に乗って、本心ではなく建前で言っている」に過ぎなかったと、分かったはずです。

 「不健康かもしれないけど、脂っこくてジューシーな高カロリーのハンバーガーをガブッと喰らいつきたいのがお客様の本心だ!」。このような「洞察」を重ねていけば、真のヒット商品が生まれます。

 「サラダマック」の失敗のあと、マクドナルドは2008年に「クォーターパウンダー」を全国発売します。「クォーターパウンダー」とは「4分の1ポンド(約113グラム)のバーガーパティを使ったハンバーガー」という意味で、従来の2倍以上ものサイズです。

 「そうそう! まさに、これが食べたかった!」とお客様が手を叩(たた)いて喜んだ、かどうかは分かりませんが、結果的にこの「クォーターパウンダー」が大ヒット。お客様の「サラダが食べたい」は「キレイなウソ」だったと証明する結果となりました。

 マクドナルドはその後も「あえて不健康そうな食事」を開発していきます。2016年にはビッグマックの1.3倍の大きさの「グランドビッグマック」、さらにビッグマックの2.8倍の大きさの「ギガビッグマック」を発売。

 その当時、マクドナルドのCMOを務めておられた足立光さんは、著書『劇薬の仕事術』の中で「ときどきガッツリしたおいしさが味わいたくなって、背徳感を感じながらも、つい食べてしまうのが、マクドナルドらしい」と表現されています。

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