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KDDI「ジョブ型移行」が暗示――“企業社会で居場所消滅するサラリーマン激増”の未来“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2020年08月04日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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会社で居場所が消滅するのはどんな人?

 背景に総人件費の抑制があるのだとすると、当然のことながら、ジョブ型への移行と人員整理は同時並行で進むことになる。ジョブ型は職務について賃金を支払うので、該当する職務が社内にない場合には、移籍や退職などが事実上、求められてしまう。

 すでに一部の企業では、大規模な人員整理をスタートしている。シチズン時計が埼玉県の製造子会社を対象に550人の希望退職を募集したほか、日本ケミファも営業職を中心に希望退職の実施を発表した。東京商工リサーチの調査によると、2020年の1〜6月までの間に希望退職の募集を行った上場企業は41社となっており、すでに前年の通年件数を上回っている。今後はさらに人員整理が本格化することが予想されるので、20年全体の件数が大幅に増えるのはほぼ確実だ。

 総務省が発表した6月の完全失業率は2.8%と、3月(2.5%)と比較してそれほど顕著に上昇しているわけではない。だが、正社員を対象とした人員整理が増えている状況を考えると、今後は非正規社員に加えて正社員の就業者数が減少する可能性が高い。正社員の場合、退職後すぐに求職活動をするケースが多いので、失業者にカウントされやすくなる。マクロ的な失業率が本格的に上昇するのはこれからだろう。

 6月の段階でも、会社には所属しているが実質的に仕事がない休業者が約236万人も存在しており、景気が回復しなければ、休業者の一部は失業者にシフトする。現時点での完全失業者は195万人なので、休業者の一部が失業者にシフトしただけでも、失業率は大幅に上がる。

 これまでの日本型雇用では、ゼネラリストが重要視されていたが、ジョブ型雇用ではそうはいかなくなる。自身のスキルを明確にできないビジネスパーソンは会社内にも、そして会社外にも居場所を見つけにくくなるだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。


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