「人が集まる」「人に直接会う」ことで稼いできた企業が、新型コロナを契機に自社戦略の見直しを迫られている。どのようにして「脱・3密」や「非接触」を実現し、ビジネスチャンスを生み出そうとしているのか。
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大型連休前に出された緊急事態宣言、外出自粛要請の影響で、多くの企業が業績を落としている。そんな逆境下でも、盛り返そうとしている事業がある。ディー・エヌ・エー(DeNA)とSOMPOホールディングスが出資する、DeNA SOMPO Mobilityの個人間カーシェア「Anyca」(エニカ)もその1つだ。
クルマをシェアするときに、クルマの所有者と利用者の間でやりとりする利用料の総額(流通総額)は、コロナの影響で大きく落ち込んだ。4月は昨年同月比約48%、5月は約41%と、半分以下の水準だったという。しかし6月には約124%、7月は約132%と回復。利用時に必要な会員登録の数も、7月には昨年同月比約150%と大きく伸びた。なぜ、AnycaはV字回復したのか。同社取締役の馬場光氏に話を聞いた。
Anycaは、個人が所有しているクルマを他の人とシェアするサービスだ。一般家庭の部屋をシェアする民泊のクルマ版というイメージだ。DeNAが2015年9月にサービスを始め、5年間で累積のカーシェア日数は約17万日、クルマの登録台数は9000台以上という。
全国でサービスを展開しているが、メインは都市部だ。例えば、東京の豊洲エリア(下記の図)だと、値段が表示されているところが、利用可能なクルマがあるところ。渋谷などでも非常に多くのクルマが見つかる。馬場氏は「レンタカーやB2Cカーシェアのように看板が掲げられているわけではないので分かりにくいですが、じわじわと多くのクルマがシェアできる状態になっています」と話す。
そんなAnycaが6月以降、業績が回復している要因には「クルマの利用が増えている世の中のトレンドと、当社が起こしたアクションが奏功したこと」(馬場氏)の2点がある。
世の中のトレンドというは「不特定多数の人が利用する公共交通機関よりも、『移動カプセルとしてのクルマ』のニーズが高まっている」ということだ。Anycaのユーザーを対象に実施したアンケートでも、はっきりと表れているという。
また、外出自粛が要請される中でも、買い物や気分転換は必要だ。政府は「GoToトラベル」も推進している。あまり遠くまで行かない中距離、近距離の移動に都合がいいのがクルマというわけだ。「Anycaは原則として24時間単位でシェアする設定になっているので、もともと中距離、レジャーでの利用は得意な領域。ニーズが戻ってきやすいところに位置していました」
「利用者の家の近くに、シェアできるクルマがある」という、個人間カーシェアならではの特徴も、コロナ禍でのニーズにマッチしたと馬場氏は見ている。
「レンタカーは基本的に旅行先で乗ったり、来日した方々が利用するインバウンド需要が多く、クルマを借りる店舗も空港や駅前など人が集まるところに多くあります。レンタカーショップは、最大手で全国で1200店舗程度。一方、Anycaに登録されているクルマの台数は9000台で、基本的に個人宅の駐車場に駐まっています。デリバリーに対応するオーナーもいるので、受け渡しできる場所が2〜3万カ所あるという状態です。わざわざ出向いた場所からではなく、自分の家の近くからクルマに乗りたいというニーズに、Anycaはマッチしたと分析しています」
法人からインバウンドまで幅広い層を対象にしているカーシェアサービスが、緊急事態宣言解除後も苦戦している一方、個人のレジャー利用が中心だったAnycaは「事業構造的にシュリンクしにくかった」と馬場氏は考えている。
Anycaでは5〜6月、オープンカーとスポーツカーの利用の割合が増えたという。クルマ好きのユーザーが、特に目的地を定めず、乗って楽しむクルマを選んだようだ。いわゆる3密にならず、移動自体をレジャー化できるクルマならではのアクティビティーとしての利用だ。同社のアンケート調査によると、オープンカー人気の背景には「換気がしやすい」という理由もある。
一方、利用が減ったのはミニバンだった。7〜8人乗りの大型車なので、家族旅行などに使われ、夏休みにも人気の車種だが、コロナ禍ではそういった使い方が減り、小人数用のクルマの利用が増えているという。「利用が一番多いのはセダン。次がミニバン、SUV、その後に、オープンカー、スポーツカーという趣向性が高いクルマになっています。ミニバンが減った分を、スポーツカーやオープンカーがカバーしているというイメージです」(馬場氏)
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