コロナ禍の逆風でも、DeNAのカーシェアが盛り返したワケ「近づけない、集めない」時代を生き抜く、企業の知恵(2/2 ページ)

» 2020年08月13日 07時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
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コロナを「正しく怖がる」記事を配信

 コロナ禍でも事業を回復すべく、Anycaが取り組んできたアクションもある。Anycaに登録されているのは個人のクルマなので、Anyca側が直接クルマを管理することはできない。そこでクルマの所有者、利用者向けに、消毒などの方法、ウイルス対策の注意点を紹介した記事を、スマートフォンアプリ上で配信している。

 「車内でマスクをする必要があるか、消毒はどこまですればいいのかなど、気になるところを専門家に聞き、インタビュー記事にして配信しました。例えば、アウディなどの自動車メーカーに、消毒するといい場所などをうかがい、ユーザーに必ず見ていただけるようにアプリで周知しています。正しく怖がる、無駄に不安をあおらない記事を心掛けて、届けています」

 ドライバーからすると、見知らぬ人も使うレンタカーよりは、オーナーの顔が分かるクルマに安心感を覚えるのだろう。Anycaでは、家の近くで利用できるクルマ、同じオーナーのクルマを何度も使うリピーターが多いという。「個人間のプラットフォームなので、消毒以外のことでも、ユーザー間で互いに安心して使える提案をしていきたい」(馬場氏)

「正直なところ、先が読めない」 長期的な視点でAI活用

 6〜7月で業績が回復し、8月も順調に伸びると期待したところで、コロナの第2波ともいえそうな状況になってしまった。状況があまり悪くならなければ「昨年同月比200%も狙える」と馬場氏は意気込むが、「正直なところ、本当に先が読めない」という。

photo DeNA SOMPO Mobility取締役の馬場光氏(取材はオンラインで実施)

 ただ、馬場氏にそれほど焦りは感じられない。「Anyca事業の構造上、これまでとあまり変わりません。コロナ禍のある/なしはあまり関係なく、事業計画や会社を作ったときの計画にのっとって進めている状況です」。馬場氏らは、長期の視点でAnycaユーザーを増やすことに注力している。そのために取り組んでいるのが、AI(人工知能)技術の活用だ。

 「Anyca事業を5年間やってきて、この場所にどんなクルマを置いたら、どのくらいシェアされるか、というデータがたまってきました。AI技術を活用して、徐々に予測ができるようになってきています。(ユーザーに対して)マイカーリースの『DeNA SOMPO Carlife』と組み合わせ、シェア前提でクルマを買うとよいとか、この車種ならAnycaでこれだけ収入を得られるといったアドバイスができそうです。長期的にAnycaを利用してくれるオーナーをしっかり獲得したいです」

 懸念点もある。今回のコロナ禍で、AIの予測精度向上につながらない、極端なデータが集まっていることだ。

 「DeNAのAIエンジニアが頭を悩ませている状況です。コロナ期間も時期を分けて、いろいろなAIモデルを組んで、数パターンの予想に取り組んでいます。精度が一番高そうなものを採用するかもしれないし、そもそもコロナ期間のデータは使わないかもしれません。今後の読みをどうするかは、まさに検討中です」

 今後の状況によっても複数のパターンができてくる。「ギャンブルではなく、これまでのデータを活用し、柔軟性高く対応していけるよう、AIを活用していきたいです」

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