仮に看護師400人が辞職したらどうなっていただろうか。まず、現場の大混乱は確実だ。
看護師はこの病院全体で2200人ほどで、退職予測数の400人は看護師全体の20%にあたる。医療・福祉業界の平均離職率は15.5%(厚生労働省「平成30年度雇用動向調査」)である。そう考えると退職率は「少し高い」程度に見えるかもしれないが、あくまで年間でならした数字である。一斉退職が非常に大きな影響を与えることは容易に想像できる。
一般的に、看護師の採用経路は主に4つある。
(1)(2)に費用はかからないが、(3)(4)は有料である。
一人当たり約60万円で採用できたとしても、400名の人員を確保すれば、それだけで2億4000万円となる。直接的な採用コストに加えて、新人の教育コストや採用担当者の人件費、人員の入れ替えにかかる生産性低下など目に見えない負担も乗る。
この膨大な負担を引き受けるのは残った職員だ。過大な負担は現場を疲弊させ、追加の退職も当然予想されていた。
このような状況を踏まえ、病院側はボーナスゼロを取りやめ、昨年より減った1か月分に変更したと報じられている。しかし結果としてボーナスを払っても、出し渋って替わりの人員を採用しても大差の無いコストが発生していた可能性は高い。結果として「やっぱり払います」と転換して起きたことは、現場職員と経営陣の信頼関係が壊れただけ、という事で誰一人得をしていない状況だ。
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