この分野に関してメガバンクがめざすところは、いわゆる「プライベートバンキング」といわれる総合資産管理サービスで手数料収入を得るというビジネスモデルです。この総合資産管理サービスは、法規制が厳しい銀行単体では業務範囲に限界があり、グループ内の証券会社や信託銀行と一体のいわゆるフィナンシャルグループとして、他メガグループとのサービス差別化にしのぎを削る流れになっているのです。
例えば、池井戸潤氏の出身母体である三菱UFJフィナンシャルグループでは、銀行業務を担う三菱UFJ銀行を中心として証券業務は三菱UFJモルガン・スタンレー証券が担当し、三菱UFJ信託銀行が信託業務を担当。金融グループ内での情報遮断といった業務上のファイアウォール・ルールは守りながらも相互顧客紹介などの手法を駆使して、総合的な金融サービスの提供を実現しつつ顧客囲い込みをはかっているのです。
すなわち、20年のメガバンクグループにおいて銀行とグループの証券会社は生き残りをかけた運命共同体的協力体制にあるわけで、一応銀行が親ではありながら銀行も証券も持ち株会社下の一部門同士なのです。従い、少なくともドラマにみられるような目に見える形での顧客の奪い合いや銀行のグループ証券いじめはまず存在しないと考えていいでしょう(グループ内での企業序列は明確に残っていますが)。
現に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荒木三郎社長は、「銀行からの送客が年間約2万件あり、これが銀行グループの証券会社としての自社の強みである」と公言してはばからず、むしろグループ内の銀行と証券会社のかつてないほどの蜜月ぶりがうかがわれるのが現実です。
このような変化は結局のところ、この7年で銀行の立場が圧倒的に弱くなってしまったことの現れに相違ありません。その原因は先に述べたマイナス金利政策の影響だけではなく、フィンテックと呼ばれる金融IT化の激流が決済業務や送金業務の銀行独占状態を崩壊させ、さらには小口融資業務までも浸食していることが挙げられます。同時に国が旗を振るキャッシュレス決済推進による現金削減の流れは、銀行不要論的な風潮すらも生み出しつつあるといえます。
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