半沢直樹を笑えない? 現実に起こり得る、メガバンク「倍返し」危機とは「証券いじめ」も今は昔(3/4 ページ)

» 2020年08月24日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

メガバンクは「倍返し」の危機に

 そんな環境下で起きた新型コロナ禍は、メガバンクの立場をさらに悪いものにしています。中でもコロナがメガバンクに及ぼした最も大きな影響は、日本だけではなく世界経済が深刻な打撃を受け、全世界的な経済停滞を引き起こしている点です。

 日本がダメなら海外があるさ、とばかりに世界的な好景気を背景として「早期に損益の50%を海外で稼ぐ」(三菱UFJ銀行三毛兼承頭取)と大きく打って出ていたメガバンクの海外戦略は、ここに来て大幅な計画見直しを迫られています。

海外戦略にも見直しの必要性が(三菱UFJ銀行の三毛頭取、出所:ロイター)

 一方国内では、コロナ禍に苦しむ取引先企業への緊急資金協力融資で貸出残高自体は増えているものの、公的保証付融資が多い地方銀行に比べてメガバンクは大企業向けのプロパー融資(信用保証協会を挟まない、直接の融資)が多く、その分リスク資産(損失を被る可能性がある金融資産)も増加する結果となっています。今後、コロナ禍の長期化いかんによっては、一気に不良債権が増えることも考えられます。一般企業のように、コロナ禍によっていきなり存続の危機に陥るようなことはありませんが、問題が長期化すればするほどコロナダメージは今後ボディブローのように効いてくるのではないかとみています。

 このような状況下にあってもメガバンク首脳は、「リーマンショック時に比べて銀行財務は健全」と強気な姿勢を崩していません。確かに現在のメガバンクは不良債権も少なく、内部留保も十分にあります。しかしリーマンショックはいわば人災であり、景気循環の一過程で起きる経済的不整合はある種の「調整局面」とも捉えられ、時間が解決する危機であったとも言えます。

 それに対して今回のコロナ禍による経済危機は、自然災害に起因するいつ終わるとも知れない先行きの見えないもので、現時点で経済的低迷は底が見えたのかすら分からない状況なのです。もし今後航空業界などで大型倒産が起きるような事態にでもなれば、現状の経済低迷状態に加えてリーマン級の経済ショックが加わる「倍返し」にもなりかねず、メガバンクの経営状況は一気に危機的状況にも陥りかねないのです。

 気になるのは市場がメガバンクの先行きをどう見ているのかですが、現在の株価推移はその先行き不安を如実に表しています。

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