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» 2020年08月26日 05時00分 公開

就活人気ランキング“圏外”に 起死回生の「デジタル採用」繰り広げるテレビ局の焦燥コロナ禍で変化は加速(1/4 ページ)

就活戦線に“異常”あり――。かつて人気企業ランキング上位の常連だったテレビ局がTOP50から消えた。その背景にはメディアの影響力がインターネットに移っている事情がある。10年以上、学生の就活指導や企業向けの採用アドバイスにあたってきた筆者が、変化に対応するためにデジタル採用戦略に舵を切り始めたテレビ局の“焦燥”に迫った。

[霜田明寛,ITmedia]

 就活人気企業ランキングから、テレビ局が消えた――。

 かつてはランキング上位の常連だったテレビ局。しかし、2021年卒の学生を対象にしたランキングではTOP50にテレビ局の名前はない。とはいえ、フジテレビやTBSなどは上位に入っているのでは、と思いきや、意外なことに、テレビ局の中でのトップ、51位にきたのはテレビ東京。その後61位にNHKが続き、TOP100内にはその他の東京キー局の名前はない(東京都千代田のワークス・ジャパンの調査・有効回答者計1万2504人)。

 もちろん、これは人気企業ランキングであり、そもそも時代を捉えた意識の高い大学生たちの行き先や志向は、このランキングには反映しづらい傾向もある。だが、それでも学生の「大企業に就職して安定したい」けれども「なにか面白いことをしたい」という2つの要望が交わる受け皿として、テレビ局がこのランキングの上位に入ってくる傾向は、2010年代序盤までは確認できた。

 筆者は09年にテレビ局就活の本を出してから10年以上、多くの大学や企業の就活セミナーに登壇し、学生の就活指導や企業向けの採用アドバイスにあたってきた。なぜこの10年間で、キー局の学生人気は落ちたのか。そして受験する側の学生や、キー局の採用戦略にはどんな変化が起きているのか。データや学生の生の声とともに見ていきたい。

photo 10年ほど前では就活生から圧倒的な人気を博していたフジテレビ(写真提供:ゲッティイメージズ)

ネットに詰め寄られる「存在感」

 冒頭に書いたように、テレビ局が就職先として人気だったのは「大企業に就職して安定したい」と「なにか面白いことをしたい」という、学生が持つ2つの要望がギリギリ交わりそうな点として機能していた部分が大きい。すなわち「ちょっと面白そうなことができる大企業」としての志望先だ。

 銀行や損害保険会社などの他の人気企業ランキング常連企業になくて、テレビ局にあるものは“面白いことができそうという期待”だった。それは昭和生まれの大学生たちが受験していた11年卒くらいまでは、大きく作用していた。しかし、11年あたりから徐々にネットの存在感が大きくなり始める。震災後、Twitterの個人アカウントを持つ人は急増した。人々はマスメディアによる報道だけでなく、Twitterに流れる情報にも触れるようになった。

photo ワークス・ジャパンの就職希望企業上位100社(2021年3月卒業・修了者対象)

各局の営業利益は?

 あふれる情報の中で、徐々に就活生たちには“テレビ局の本質”が見えやすくなっていく。例えば最近では“テレビ局は何で利益をあげているのか”というツイートが拡散されていた。これはIR資料を見れば分かるものではあるが、実際、志望するにあたってそこまでする学生は多くない。ちなみに各局の2020年3月期の営業利益は以下の通りである。

【フジテレビ】 メディア:139億円 都市開発・観光:137億円

【TBS】 メディア:24億円 不動産:79億円

【日テレ】 メディア:406億円 不動産賃貸:34億円

【テレ朝】 テレビ:70億円 音楽出版:10億円

 これを見れば(少なくとも利益の面で言えば)TBSは「不動産会社」のようにも見え、フジテレビは「お台場の都市開発業者」のようにも見えてしまう。「テレビ局はテレビ番組を作って利益を出すところ」と考えていた学生には、違う見え方を提示しているかもしれない。

photo TBSはメディア事業で24億円の営業利益を上げる一方、不動産事業によってその3倍を超える79億円の営業利益をあげている(TBSの2020年3月期の決算資料より)
photo フジテレビはメディア事業で139億円の営業利益を上げている一方で、都市開発・観光事業でも137億円の営業利益を上げている(フジテレビの2020年3月期の決算資料より)
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