マーケティング・シンカ論

「おじさんCEOライブ」大人気!?……日中企業、ECマーケティングで大差がついた訳日本企業も「まね」できるか(3/4 ページ)

» 2020年08月31日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

濱野: さらに(EC大手の)アリババに対しては、中国を代表する企業として国もメディアも全体で盛り上げているということもあります。日本では楽天すら、(EC業界で)世界を代表する時価総額には至っていない。

中国の消費者は「ヒトを見て買う」

 あと、中国で(購買の判断は)結局のところ“ヒトが軸”である、という点も大きい。「自分たちが信じている人から買う」という側面があるのです。CEOや従業員のライブ動画でモノを買ってもらえるのは、やはりヒト軸だからです。「売る人への信頼」が無いと安い商品でも売れない。

photo トレンドExpressの濱野智成社長

 一方で日本人はやはり“モノ軸”、安くいい物だから買うというスタンスですよね。従業員ライブも中国ほど盛り上がらないのにはそういう理由もあると思います。

――企業の環境や姿勢の違いについてはどう考えますか。

濱野: CEOライブが典型的な事例ですが、中国では必要なインフラが整っていた、ということもあります。日本で社長ライブを実施して商品を売ろうとしても、向いているプラットフォームに乏しい。YouTubeに登録して自分たちの商品の宣伝するくらいはできますが……一方で、中国ではタオバオライブ(出展者が動画をライブ配信し視聴者がそのまま商品購入できるアプリの1つ)などライブコマース向けの環境が整備・普及しています。

 さらには、そうしたサービスへの「抵抗感の無さ」も大きいと思います。CEOライブは、「トップ自らが変わらないと会社も変わらない」という危機感から、CEO自ら従業員に背中を見せようとして生まれたムーブメントです。その姿勢が消費者の心を打った。日本で同じようなことをしている人は少ないと思います。

炎上リスク気にする日本企業

――日本だと企業の公式Twitterレベルの施策ですら、現場の裁量が少なく柔軟な情報発信や判断ができないという批判をよく聞きます。

濱野: 中国より日本の方が炎上リスクを気にするということはあると思います。派手に社長ライブなどをやり始めたら、批判や顰蹙(ひんしゅく)を浴びないかと日本企業は慎重になるでしょうね。SNS発信のレギュレーションについてもとてもお堅い。

 とあるショッピングモールのデベロッパーが言っていました。「(日本で)従業員にSNSを発信させて商品のファンを集めようとしても、炎上やブランド毀損のリスクがある。ポリシーの設定や従業員教育をちゃんとしない限り、ちゃんと踏み込めないことが多い」。

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