総合商社は「三菱」から「伊藤忠」時代に? 5大商社は大幅高古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

» 2020年09月04日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

3大商社がコロナで大打撃

 伊藤忠商事の株価がここまで上昇した背景には、非資源ビジネスへの注力という側面が強い。近年の商社ビジネスといえば、事業に投資をする持株会社としての側面も強まっている。しかしながら、伝統的な収益源である資源やエネルギーの収益に占める割合は決して小さくない。これらのビジネスは、商品市況のブレが業績を大きく左右する特徴があり、今回の事例でリスク要因として発現したかたちとなる。

 三菱商事は、19年度の第1四半期(1Q)に1612億円の連結純利益を計上したが、その半分以上である875億円が、「天然ガス」といったエネルギーや金属資源ビジネスから得たものである。一方で、20年度の1Qでは前期比603億円減となる272億円にまで落ち込んでいる。

 三菱商事以外にも、三井物産や住友商事等、資源ビジネス比率が高い商社は、コロナショックによる資源価格の下落により打撃を受けた。特に、住友商事はコロナによるニッケル事業の操業停止とニッケル価格下落のあおりを受けて、およそ550億円の巨額減損処理を余儀なくされた結果、5大商社中で唯一、今期に赤字となってしまった。

1Qの減益著しい商社業界 オコスモ作成 1Qの減益著しい商社業界

 一方で、丸紅・伊藤忠は純利益に占めるエネルギー・金属資源ビジネスの比率が低く、前年同期比の減益幅は小さい。その結果、今期に関しては財閥系の3大商社と、伊藤忠・丸紅の立場が逆転しつつあるようにもみえる。伊藤忠商事は5大商社で唯一、今期の純利益が1000億円超えとなっているが、これは盤石な非資源ビジネスの支えなしでは達成し得なかった業績だ。

 その立役者は「情報ソリューション」(上図グレー部分)セグメントだ。当該セグメントは、同社の中でも高収益・高成長な伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を筆頭としたもので、同社の1Qにおける純利益は前年同期比で+36.5%の40.6億円と大幅成長。その前年にも純利益を47.6%伸ばしており、同社ビジネスの中でも情報ソリューションビジネスが頭角を現してきているのだ。

 伊藤忠商事は、先月26日にファミリーマートを完全子会社化に向けた公開買付を成功させた。生活や情報といった事業領域を拡大することで、より市況に左右されにくい商社モデルの構築を模索していると考えられる。

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