マーケティング・シンカ論

デジタルで「4P」はどう変わる 価格の流動化と“新通貨”登場で新たに脚光を浴びる2つのビジネスモデルとは?「新時代」のマーケティング教室(3/4 ページ)

» 2020年09月09日 05時00分 公開
[水越康介ITmedia]
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 例えば、ネットオークションがその典型である。ヤフオク!やメルカリなど、ネットオークションやフリマにおいて価格はあってないようなものであり、その時々の交渉によって異なる価格になっている。

 売り手が価格を一方的に決めるのではなく、顧客がある程度価格の決定に参加している、という点にまさにデジタル時代らしさを感じられる。こうした場合には、お互いの自由な交渉によるだけではなく、顧客の参加の程度も事前に定めることができるだろう。

 最も自由なのは、「買い手決定型」の価格設定である。例えば、厳密な「消費者同士」の関係ではないが、ロックバンドRadioheadがインターネットで楽曲を配信した際には、買い手が自由に価格を決めることができた。一方で、ネットオークションでは、多くの場合最低落札価格が売り手によって定められている。「価格提案型」の価格設定になっているわけである。

 どの仕組みが良いかは一概にはいえない。Radioheadの試みは興味深いが、米調査会社のcomScoreによれば、ダウンロードした一定の人々の中で、約60%が無料でダウンロードしていたという。有料でダウンロードした人が支払った金額は平均6ドルであり、無料ダウンロードした人まで含めると、平均支払額は2.26ドルだったとされる。

 2007年の取り組みかつ試験的なものだとはいえ、最近の曲をデジタルでダウンロードする場合には1曲数百円程度であることを考えると、やや安すぎるようにも感じる。デジタル時代における大きな特徴である顧客の参加の程度については、商品や顧客の特質に合わせてまだまだ検討が必要だといえるだろう。

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