中国は空前の猫ブーム。中国ネコノミクスが生んだ、利回り10%の「エア猫投資詐欺」浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/5 ページ)

» 2020年09月10日 16時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

たまごっち、ポストペット、裾野広い猫経済

 ペット文化の裾野は広い。日本では、関西大学の宮本勝浩名誉教授が16年にキャットフードや写真集、猫カフェなど「ネコノミクス」による経済効果を発表し、15年の1年間で約2兆3162 億円との試算を出した(リンク)。

 日本で飼われている猫の頭数は1000万頭に満たないので(ペットフード協会調査)、中国版ネコノミクスの大きさは日本の比ではない。

 さらに「猫駅長」「猫カレンダー」などのアナログだけでなく、デジタル市場も大きい。ペット、ソフトの両方で先進国と言える日本では1996年に発売された「たまごっち」が社会現象となり、技術の進化に合わせてアップデートが繰り返されてきた。インターネットが家庭で使われるようになった97年には、クマがメールを運ぶソフト「ポストペット」が生まれ、ネットユーザーの間で大人気になった。

 日本で少なくとも数十年かけて耕されてきた猫市場が、中国ではこの5年でそれ以上の規模に成長した。

 猫狂いを意味する「吸猫」、猫の奴隷を意味する「猫奴」という言葉だけでなく、ペットを飼えない人などがデジタル空間で猫を愛でる「雲養猫」という造語も16年に出現し、完全に定着している。

ネット上で猫を愛でる「雲養猫」。ウェイボで検索すると、多くの猫コンテンツが表示される。

 猫画像や動画をSNSでシェアするだけでなく、猫を集めたり、パートナーを見つけ、交配するアプリも数多くあり、それらがネコノミクスの一翼を担っていることが今回の「仮想猫投資詐欺」の背景にある。

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