中国がスクラッチをブロック インターネット分断が子どもの領域にも星暁雄「21世紀のイノベーションのジレンマ」(1/5 ページ)

» 2020年09月16日 07時00分 公開
[星暁雄ITmedia]
スクラッチのWebページ。プログラムを作るだけでなく、「世界中のみんなと共有」が特徴だ

 中国が、子どものプログラミング教育用ツールであるスクラッチ(Scratch)のWebサイトをブロックした。2020年8月13日に中国からスクラッチのWebサイトが使えなくなり、その後も一部の中国ユーザーによる特殊な手段を使った書き込みが続いていたが9月中旬にはそれも途絶えてしまった。

 スクラッチは、米MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究グループが開発した。そのWebサイトは5000万人以上の登録ユーザーを抱える。誰でも無償で利用可能だ。スクラッチのサイトはプログラミングの教材であるだけでなく、子どもどうしの交流の場としての役割も持っている。自作のプログラムを公開してみんなに見てもらったり、違う子どもたちが手を加えて改造したりすることが可能だ。ディスカッションフォーラム(掲示板)では自由に意見を交換することができる。スクラッチのサイトを見ると、中国の子ども、台湾、あるいはマレーシア在住で中国語を使う子どもたちの活動が確認できる。

 そうした場が、大陸中国の子どもたちから取りあげられてしまったのである。

 中国の子どもたちのプログラミング教育はどうなってしまうのか。詳しくは後述するが、スクラッチサイトが使えなくても、別の手段を使って中国国内のプログラミング教育は続けられるだろう。

 一方で、スクラッチサイトのブロック解除への道筋は困難なものになりそうだ。後述するように、中国と、スクラッチのサイトを運営する米国とでは「表現の自由」の基準が大きく異なるからだ。

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