大戸屋買収の渦中に、コロワイドが「場外乱闘」に巻き込まれた理由専門家のイロメガネ(4/4 ページ)

» 2020年09月21日 07時00分 公開
[村上裕一ITmedia]
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のれんと減損

 買収で発生したのれんはバランスシートの「無形資産」に計上されると説明した。そしてデイリー新潮の記事が指摘したのは、そののれんが消えてしまえばコロワイドは債務超過に陥るという話だ。

 のれんは純資産より高値で企業を取得した際に発生する。企業の価値は保有資産だけで評価されるわけではなく、生み出す利益(正確にはキャッシュフロー)によっても評価される。

 保有資産より高値で取得する理由は、この将来得られるであろう利益を当て込んだものだ。これを超過収益力と呼び、のれんを資産として計上する根拠となる。

 当然のことながら超過収益力が落ち込めばのれんは消えてしまい、バランスシート上から消す必要がある。これがのれんの減損ということになるが、デイリー新潮では独自の計算式でコロワイドが計上しているのれんに価値はない、「超過収益性を持つというのは詭弁(きべん)」と厳しく指摘した。

デイリー新潮の主張。のれんの一部を減損すると、債務超過に転落する

 具体的には677億円分ののれんが本来減損されるべきで、これはコロワイドの純資産250億円を大幅に超えている、だから427億円の債務超過、つまり資産を全て処分して負債を返済しても427億円の負債がまだ残ってしまう状況であると指摘している。

 これが事実であればコロワイドの株は価値がゼロの紙クズということになりかねず、そしてそのような状況をコロワイドが隠しているのであれば粉飾決算になってしまう。

 冒頭で書いたようにコロワイド側が「虚偽の報道によって当社の名誉・信用を毀損するものとして、新潮社に対する法的処理を講じてまいる所存」と強く反発をした理由はこのような事情があるからだ。

 ではコロワイドは実際に債務超過に陥っているのか? それをごまかして粉飾決算をしているのか? デイリー新潮の指摘が正しいかどうかを知るには、のれんの減損がどのように行われているか知る必要があるが、これは次回の記事で解説をしたい。

後編:減損テストから見る、コロワイドが新潮にブチ切れた理由

プロフィール:村上裕一 公認会計士

監査法人、大手メーカー、税理士法人の勤務を経て、監査、経理・財務、税務顧問、会計コンサルティングなど幅広く経験を積む。現在は会計コンサルタントとしてM&Aや事業戦略の支援を手掛ける。経営者の「相棒」を目指し、クライアント支援に奮闘中。趣味はゲームで一番ハマったのはドラゴンクエスト(シリーズ全てプレイ)。ゲーム業界にも明るい。1984年生まれで二児のパパ。

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