アフターコロナで問われる「雇用と外注の境界」、海外雇用の時代到来か専門家のイロメガネ(4/6 ページ)

» 2020年09月23日 07時00分 公開
[中嶋よしふみITmedia]
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雇用と外注の境界線が曖昧になる

 雇用の話がいつの間にか外注の話に変わっていると思われたかもしれないが、リモートワークによって会社の外で仕事が行われれば、状況は実質的に外注と同じだ。

 仕事を会社の内部で行うか外部で行うか、社員が行うか外注先が行うか。これらは、従来ハッキリと区別されていたが、在宅勤務で可能な仕事は外注でも可能になり、そうなれば場所にこだわる必要もない。

 ここで言いたいのは、全ての仕事が海外に外注されるということではなく、リモートワークによって雇用と外注、オフィスと自宅、都市部と地方、国内と国外といった、これまで明確に存在していた境界線が曖昧になることを意味する。

 さらに、近年急激に増えている副業の話も加えると、ある人が本業の仕事をリモートワークで行って、副業も自宅で行うというケースが出てくる。そうなると複数の取引先があるフリーランスと同じで、「本業」は売上の割合が大きい取引先くらいの扱いだ。つまりリモートワークの普及は、働く側も雇われる意味を考えるキッカケとなるだろう。

 すると、これまでの常識だった、企業の根幹を成す重要な仕事は、軽々しく外注に出されないはずだ、地方や海外でリモートワーカーに任せるわけがない、という思い込みは勘違いということになってくる。

 これまでも税理士や社労士、弁護士など、重要だが社内では片付けられない仕事は、大手から中小企業まで日常的に、外部の専門家に依頼されている。

「在宅勤務で可能な仕事は外注が可能、外注が可能なら場所にこだわる必要なんてない」

 この考え方を進めていくと、経営者は「社員を通勤させる意味は何か?」「外注でも可能な仕事を、あえて社員を雇って行う意味は何か?」と、雇用の意味や必然性を考えざるを得なくなる。

 企業は、業績が悪化しても軽々しく解雇はできず、社会保険料の負担も重い。雇用契約を結ぶことで社員の労働力を自社の業務へ独占的に使えるメリットはあるが、多数の社員を抱えるリスクやデメリットも当然ある。

 リモートワークで選択肢が広がったのは従業員だけでなく企業側も同様ということだ。

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