アフターコロナで問われる「雇用と外注の境界」、海外雇用の時代到来か専門家のイロメガネ(3/6 ページ)

» 2020年09月23日 07時00分 公開
[中嶋よしふみITmedia]
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リモートワークが経営者の意識を変える

 8月に、元ホームレスの社長が会社を上場させたと話題になったサンアスタリスクは、ベンチャー企業のIT支援を行う会社だが、そこで活躍しているのはベトナムに抱えている1000人以上のエンジニアだという。

 各社の国内のコールセンターが、北海道や沖縄など人件費の安い地域、場合によっては中国にあることはすでに知られている。筆者もつい先日、NTTのコールセンターへ問い合わせをしたところ、オペレーターに若干の北海道訛りがあると感じたが、話を終えたオペレーターは、やはり北海道のコールセンターであることと名前を告げて電話を切った。これと同様に米国のコールセンターはインドに多数あるといった話を知っている人も多いだろう。

 ソフトウェアの開発やコールセンター業務など、企業から切り離して運用しやすい部門は外部委託され、地域も問わない。そしてコーポレート部門と呼ばれる人事・経理・総務などもすでに外注されているケースがある。

 そこまで考える企業なんてごく一部だから、話が極端すぎる、と笑う人がいるかもしれないが、かつてNHKスペシャルで「人事も経理も中国へ」と題して、国内のオフィスワークが海外へアウトソーシングされるという話が放送されたのは10年以上も前の07年だ。

 「コロナは変化を加速させた」といった表現があちこちで使われているが、外注できない仕事はすでになく、外注先も国内に留まらない。

 先ほど紹介したNHKスペシャルでは、インフォデリバーという企業の中国・大連センターが、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)業務を受託した企業が、業種別に紹介されている。

 全116社中で最も多いのが、リモートワークが適している「IT企業(ITサービス、情報サービス企業)」で33社あった。続いて「流通/運輸・卸売/小売/通販会社」が26社、「製造業・通信会社」が18社となっている。流通、小売、製造業は、いずれも利幅が薄いがゆえにコストダウンを強く求められるものの、あらゆる工程に多数の企業が関与しているため、外注に抵抗がない業種といえる。当時番組で取り上げられた企業にも、通販大手のニッセンがある。

 一方、受託の実績が最も少ないのは「銀行(メガバンク)・信託銀行」の2業種だが、これらはセキュリティ的な問題で外注、特に海外には仕事を出しにくいと考えられる。

 同社の導入実績を見ると、ある程度の傾向が見て取れるが、今後はこういった傾向にも間違いなく変化が生まれるだろう。

インフォデリバーの導入事例では、BPOを行っている企業の業種が把握できる(リンク

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