総務省が8月27日に公表した、2020年7月分の「人口移動報告(外国人を含む)」では、7月に東京・神奈川・千葉・埼玉から転出した人が転入した人を上回った、つまり東京圏から人口が地方へ流出したと話題となっている。
「通勤が不要になったことで、都市部に住んでいた人が物価の安い地方へ脱出した結果だが、これが進めば都市部の不動産価格が暴落することになる」
今回の調査結果で、まことしやかに語られていた「都市部の不動産価格暴落」が数字で裏付けられたようにも見えるが、実際には転出超過はわずか1459人にすぎず、コロナが収まれば元に戻る程度だ。数が少ないことからも、こういった動きは一部にとどまると考えられる。というのも、現在の職場がリモートワーク可能でも、転職後も同じように働けるとは限らず、また定年退職の年齢まで今の会社が無事に生き残っていると信じているような人もいないからだ。
つまり、今後都市を脱出するのは、雇用される側ではなく雇用する側だ。
国内の給与水準は都道府県ごとに大きく異なり、都市部と比べて賃金が何割も低い地域は多数ある。そうしたなか、リモートワークが可能な都市部の会社としては、同じ賃金なら地方の方が優秀な人材を確保できるし、同じ能力の人材なら地方の方が安く確保できると考えられる。そうなると、給与水準の高い都市部でわざわざ採用する必要がなくなってしまう。
出勤をゼロにできなくても、例えば月に1度で良いのなら、東京の会社が沖縄や北海道に住んでいる人を雇うことも問題はない。
さまざまなアシスタント業務をオンラインで行う「キャスター」では、出社義務のないフルリモートでの働き方が14年から定着しており、その数は700人に上る。そしてスタッフは全国45の都道府県に散らばっており、東京以外の在住者は8割を超えるという。
このような話題は国内にとどまらない。賃金水準が圧倒的に低い地域で人材を雇用できるのなら、手間をかけても海外の人材を採用するメリットは大きい。製造業が人件費の安いアジアへ工場を移転したように、同じことがオフィスワーカーでも発生していくだろう。
そしてコロナ禍を経て「在宅勤務でも仕事は案外回る」と実感した経営者のなかには、こんな違和感を覚えた人も居るだろう。
在宅勤務で問題が起きないなら、雇用と外注の違いって一体何だ?
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