巷で“スーツ離れ”が起きているのに、なぜビジネスリュックは好調なのか水曜インタビュー劇場(在宅公演)(2/5 ページ)

» 2020年09月23日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

ガジェタブルの特徴

土肥: エースのビジネスリュック「ガジェタブル」が好調のようですね。コロナ禍にもかかわらず、販売個数は前年比で上回っているそうですが、このカバンはどのような特徴があるのでしょうか?

森川: 商品は2018年6月に、販売を始めました。スリムなボディにもかかわらず、B4ファイルや15インチのノートPCなどを持ち運ぶことができて、ペットボトルや折りたたみ傘を差し込めるホルダーなどが付いています。

 そして、最大の特徴は「電車内でも邪魔になりにくいように、周囲に配慮した設計になっている」こと。どういうことかというと、ポケットをいくつか配置しているので、リュックを前に抱えたときでも、周囲になるべく迷惑をかけずにスマホなどを手にすることができるんですよね。

前に抱えたときでも、取り出しやすい位置にポケットを配置

土肥: 確かに、前に抱えたときでも、一番上にあるポケットは便利そう。なぜ、このような商品をつくろうと思ったのでしょうか?

森川: 数年ほど前から、「電車内でのリュックの背負い方に、問題がある」といった声が届くようになりました。日本民営鉄道協会が「駅と電車内のマナーに関するアンケート」(2018年度)を実施していて、その結果を見ると、「ヘッドフォンからの音もれ」「座席の座り方」「騒々しい会話・はしゃぎまわり」などを抑えて、1位は「荷物の持ち方・置き方」だったんですよね。ちなみに、前年は3位でした。

電車を利用したとき、迷惑だなあと感じる行為(出典:日本民営鉄道協会)

 また「荷物の持ち方・置き方」のうち、最も迷惑に感じる行為を聞いたところ、3位の「床(足もと)に置かれた荷物」、2位の「座席に置かれた荷物」と答えたのは8〜9%だったのに対し、1位の「背中や肩のリュックサック・ショルダーバッグなど」と答えたのは66.2%もいました。2位に50ポイント以上の差をつけて、断トツの1位だったわけです。

 電車内でリュックを背負うことに対して、「迷惑だなあ」と感じている人が多い。こうした結果を受けて、社内から「電車の中でも邪魔に感じられにくいリュックをつくることはできないのか」という声もあって、「なるべくスリムで、コンパクトな設計でつくることができるかもしれない」といった形で、開発が進んでいきました。

 鉄道各社もポスターなどで「リュックは前に抱えたり、網棚に置くなど他の方の迷惑にならないように」と訴えていますが、どうすれば邪魔にならないのか。前に抱えたときでも、取り出しやすい位置にポケットを配置すれば、この課題を解決できるのではないかと考えました。こうした背景がありまして、「スマホをサッと取り出して使いたいなあ」といったシーンでも対応できる設計にしました。

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