巷で“スーツ離れ”が起きているのに、なぜビジネスリュックは好調なのか水曜インタビュー劇場(在宅公演)(3/5 ページ)

» 2020年09月23日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

カバンに求める機能も変化

土肥: ガジェタブルは長四角のデザインになっているので、PCや書類などを効率よく収納できそうですよね。他社のリュックを含めて長四角のモノが主流になっているなあという印象を受けるのですが、以前は丸みを帯びているモノが多かったですよね。

森川: 当社でも以前は丸みを帯びたリュックを扱っていまして、また大容量のモノが多かったですね。当時は、持ち運ぶ荷物が多くて、リュックを仕方なく選んでいた人が多かったのかもしれません。

 以前と比べて、「街中でリュックを背負っている人が多くなったなあ」と感じられるかもしれませんが、いつごろから増えていったのか。東日本大震災をきっかけに、ものすごく増えたんですよね。「安全性などを考えて、両手を使えるようにしたい。じゃあ、リュックだよね」といった形で、ニーズがどんどん高まっていきました。それまでは「仕事をするのにリュックを背負うなんて……」といった感じで、受け入れられない職場も多かったのですが、このころから変化が出てきました。

 また、ビジネスシーンでのスーツもカジュアル化していき、革靴ではなくスニーカーも売れるようになっていきました。さらに、スマホが普及していったことで、荷物を運びながらでも両手を使いたい人が増えていきました。

土肥: ふむふむ。

縦・横二方向から取り出せるボトルホルダー(左)、縦・横二方向から取り出せるPC収納部

森川: 先ほど申し上げたように、以前は荷物がたくさんあるのでリュックを使っている人が多かったのですが、10年ほど前から荷物は少ないけれど両手を使いたいという理由で、リュックを選ぶ人が増えてきました。

 紙の資料はなるべく減らそうという動きもあって、「スマホ一台あれば大丈夫。だからリュックは薄くして」といった声が増えてきました。その一方で、「PCを入れて、タブレット端末も入れて、周辺機器も入れて、紙の資料も入れて」といった形で、大容量を望まれる人もいて、二極化の傾向があるんですよね。

土肥: そのような話を聞いていると、ビジネスパーソンの働き方とカバンは深い関係がありますね。30〜40年ほど前の話になりますが、当時、重役感が漂っている人は「手ぶらで出社しているなあ」という印象がありました。朝、出社するときには新聞だけを手にして、電車の中で読む。そして、帰りは手ぶら。または、書類が入っている封筒だけ。あっ、カバンは持ってないので、深い関係はないですかね(汗)。

森川: 当社でもフロッピーディスクが収納できるカバンを販売していたことがありました。四角のポケットが付いていて、そこにフロッピーディスクを入れることができる。

土肥: 仕事で使うツールが変わることによって、カバンに求める機能も変化しているということですね。

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