小学生も株式投資? ベテラン投資家の脳裏によぎる“ライブドアのトラウマ”古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

» 2020年09月25日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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90年経っても色あせない“靴磨きの少年”

 ただし、景気に波があるのと同様に、株式市場にも波がある。いずれ来るであろう急落への注意が今後求められてくるのかもしれない。

 ところで、この記事を執筆している9月23日は靴みがきの日であるという。この「靴磨き」という言葉は投資とゆかりの深い言葉だ。

 エピソードは1929年にさかのぼる。

 世界恐慌直前の米国では、町中の人々が株式投資に沸き立っていたという。米国の政治家、バーナード・バルークは靴磨きを頼んだ際に、その少年が投資の豆知識を語ってくれたという。バルーク氏はその少年の話を聞き、このような子供まで投資の話をするようでは、もはや次に株を買う人は残っていないと考えた。その結果、バルーク氏は世界恐慌の前に持ち株を整理でき、暴落を回避できたという。

 この逸話が示唆することは、株式投資で利益が出るということは、「だれかが自分よりも高い値段でその株式を買ってくれた」ということだ。当時は情報の非対称性が現在よりも色濃く、社会的弱者が株式投資に殺到するということはあまねく人々に情報が行き渡ったことを暗示している。

 現在では情報の非対称性こそ小さくなってはいる。しかし、それまで全く株のことに興味を示さなかった人々が、株式投資のことをろくに調べもせずに投資を始めているような状況になれば、情報の非対称性は現代においても生じ得るだろう。そのような人々が街中で散見されるようになり、楽観ムードが市場を支配するときこそ、兜の帯を締めるべきなのだ。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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