コロナ禍を機に投資デビューを果たす人々が急増している。
2019年末に約514万口座の顧客基盤を持つ国内トップシェアのSBI証券は、20年の上半期でおよそ57万口座を獲得し、570万口座となった。業界2位の楽天証券は19年末の337万口座から、83万口座増の、410万口座となり、大手ネット証券ではダントツの伸びを見せた。楽天証券では、楽天市場の「楽天スーパーポイント」を投資資金に充当できたり、ポイント運用サービスを口座解説の呼び水にしたりと、投資未経験者層の獲得に力を入れてきた。
コロナ禍による可処分時間の増加や、政府による10万円の定額給付金も、未経験者の投資デビューを少なからず後押ししたといえるのかもしれない。
海外に目を向けると、特に米国における口座開設の伸びが目覚ましい。米ロビンフッドは、今年の上半期だけで300万口座以上を獲得しており、米国における新規口座開設数の半分以上を占めるほどの人気ぶりだ。同社の顧客は中小型株を中心に短期的・投機的な売買を繰り返すことで「株価の乱高下を巻き起こしている」と懸念があがるほどであり、“ロビンフッダー”として市場に影響力をもつに至っている。
ただでさえ資産運用を行っている人の比率が高い米国においても、コロナ禍で数百万もの潜在口座を掘り起こしたと考えると、足元の投資ブームは世界的な動きといっても過言ではないのかもしれない。
9月19日にTBS「ニュースキャスター」にて放映された、「投資を始める若者の急増」というテーマ特集がSNS上で話題になった。番組では若者のひとりとして、小学生が株式投資を行う様子も報じられており、投資の広がりを広く知らしめた。
番組については、金融リテラシー醸成や、現金・預金主義からの脱却という観点で「教育的効果が高い」といった肯定的な意見もみられたが、ベテラン投資家には全く別の受け取り方をしたようだ。
「小学生が株取引を行う」というテーマでベテラン投資家の記憶に強く残っているのは、06年1月に発生したライブドアショックであるという。当時は、1株あたりの価格が高額であったことから、度重なる株式分割で安くなったライブドア株に個人投資家の人気が殺到した。
ライブドア株が隆盛を極めた当時も、お小遣いやお年玉で投資する小中高生、いわゆる「子ども投資家」の存在がマスコミによってセンセーショナルに取り上げられていた。その後間もなく、子ども投資家たちは数千円から数万円規模の“手痛い勉強代”の支払いを余儀なくされることになるが、ベテラン投資家の間ではこの動きが現在と重なって見えるようだ。
それでは、足元の状況はライブドアショックに近いのだろうか。日銀の資金循環統計等から確認したい。
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