フィンテックで変わる財務

唯一無二のアイテムをデジタル化 NFTとは何か?(3/3 ページ)

» 2020年10月08日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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リアルな財と紐付いたNFTを発行して管理する

 こうしたデジタルデータの所有権証明だけでなく、NFTの活用はリアルな財にも広がろうとしている。

 スタートバーンが提供するStatrailは、絵画作品の所有者をブロックチェーン上にNFTとして記録しようという試みだ。

 「アートの世界も、これまで紙の証明書があったりなかったりしていた。世界の流通作品の40−50%が贋作(がんさく)といわれる中で、真作の所有者の証明をしようというサービスだ」(太田氏)

Startrailの仕組みを使い、絵画作品にICタグを発行、登録、管理できるサービス、Startbahn Cert.

 同社は絵画に貼り付けるICタグを販売する。絵画にそのICタグを貼り付け、ICタグのIDと、ブロックチェーン上に発行されたNFTのトークンIDをひも付ける。技術的にはイーサリアムのブロックチェーン上にERC721という規格に準拠した形で、NFTが発行される、このトークン(NFT)の所有者は絵画の所有者であるとみなされる形だ。実際には、ユーザーはブロックチェーンを実際に触ったり秘密鍵を管理したりする必要はない。第三者の秘密鍵管理サービスを使い、そこにIDとパスワードでログインすることで、ブロックチェーンの理解がなくても、NFTを管理できる仕組みになっている。

 この仕組みを使い、その絵画作品の現在の所有者が誰なのか、どんな所有者の手を渡ってきたのかを、確認できるようにしている。ICタグを読み取るだけで、そうした来歴が確認できる。来歴は、公開設定によって閲覧できるユーザーを限定できる仕組みも盛り込んでいる。

 デジタルコンテンツだけでなく、リアルな財にNFTが使われることのメリットは何か。太田氏は、管理コストが低下し流通が促進されることだと話す。「権利の管理にはコストがかかるので、価値の低いものはコストに見合わず、その結果流通してこなかった。ブロックチェーンを使い仲介コストが下がると、一般の人が書いたイラストでも財として流通できるようになるかもしれない」

スタートバーンの太田圭亮執行役員

 不動産や自動車などの財の所有者が、現在どう管理されているかを考えるとイメージしやすい。不動産であれば法務局に、誰が所有者かという登記を行うことで、管理が行われている。自動車であれば運輸局に登録し、ナンバープレートが発行される。内部の管理はデジタルのデータベースで行われているが、登録や所有者の証明は紙ベースで、大変なコストが掛かっているのが分かる。

 不動産や自動車ならば、これだけのコストをかけても所有者を明確にする価値があるが、もっと低価格なものは、登記や登録といった仕組みを使うことが難しかった。しかし実際の財とひも付いたNFTを発行し、それをブロックチェーン上に記録することで、安価に所有者の登録や移転の管理が可能になる。NFTが熱い注目を浴びている背景には、こうした仕組みの現実性が次第に高まってきたことがあるのだろう。

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