コロナで吹き飛んだ経済効果400億円 オンライン開催に踏み切った「さっぽろオータムフェスト」の勝算――「Amazonと同じにはしない」「近づけない、集めない」 時代を生き抜く、企業の知恵(2/4 ページ)

» 2020年10月17日 05時00分 公開
[大久保徳彦ITmedia]

「ソムリエの解説付きワイン」に「シェフ厳選のオードブルセット」

 Amazonなどとの差別化を図るためにどんな戦略を取ったのか。山上氏は意気込む。

 「さっぽろオータムフェストの特徴は"会場毎のコンセプトに合わせた商品のセレクト力"であり、オンラインでの商品提供にあたっては、通常Web販売をしていない商品も含めた"セット商品の企画"に注力しています」

 エリア毎にそれぞれ3000円、5000円、1万円の価格帯でセット商品を販売するという。例えば、オクトーバーフェストをコンセプトとした1丁目会場であれば、ドイツビールとドイツソーセージ、グーラッシュ(シチュー)などを組み合わせたセットを提供する。

phot オクトーバーフェストをコンセプトとした1丁目会場(さっぽろオータムフェストのWebサイトより)
phot ドイツビールとドイツソーセージ、グーラッシュ(シチュー)などを組み合わせたセットを提供する(さっぽろオータムフェストのWebサイトより)

 単に複数の商品のパッケージングだけにとどまらず、例えば「北海道のお酒」をテーマにした7丁目会場であれば、購入者限定で「ソムリエによるオンラインでのワインの楽しみ方の解説」をセットのサービスとしてつけるなど、プラスアルファの体験を付加価値として提供するセットもある。

 「道内ワイナリーセレクションの白ワイン3本入りを1万円で購入してくれたお客さんには、後日オンラインでソムリエが解説してくれる仕組みにしました。他にも札幌市内の有名店のシェフたちが、北海道産の一流の食材を使って調理したオードブルセットやスイーツセット商品などを提供します。

 本来のオータムフェストでは、実際にソムリエや有名店のシェフが大通公園でその腕前を披露してくれるのですが、オンラインでもそのイベント体験に少しでも近づけたいという気持ちで、それぞれのエリア担当がセット商品を企画しています」

phot 北海道のお酒」をテーマにした7丁目会場であれば、購入者限定で「ソムリエによるオンラインでのワインの楽しみ方の解説」をセットのサービスとしてつける(さっぽろオータムフェストのWebサイトより)
phot 道内ワイナリーセレクションの白ワイン3本入りを1万円で購入してくれたお客さんには、後日オンラインでソムリエが解説してくれる仕組みにした(さっぽろオータムフェストのWebサイトより)

経営が苦しい飲食店・生産者に配慮した配送システム

 また、今回のオンライン開催での特徴が、3期に分けた販売期間だ。今回の「オンラインさっぽろオータムフェスト 2020」では販売期間を1期(9月30日〜10月7日)、2期(10月8日〜15日)、3期(10月16日〜23日)の各8日間に分け、商品を届けるのはそれぞれの販売期間が終了してからとなる。これは受注スキームとして、商品の注文を受けてから生産と梱包を行う「受注生産方式」をとっているためだ。

 この生産方式により、複数の会場にまたがって商品を購入した顧客に対しても、一括配送をすることによって送料を安く抑えられるほか、商品在庫のロスも出にくくなる。大手物流会社の協力によって、出展者側の目線に立った工夫を実現させたのだ。山上氏は言う。

 「経営が苦しい飲食店や生産者は新型コロナの影響によって大変な思いをしています。彼らに配慮したオペレーションを観光協会からパートナーの物流会社へ提案しました。商品管理を物流会社が一括で管理することによって送料の面だけでなく、余剰ロスの面でも余計な生産をせずにSDGs(持続可能な開発目標)にも配慮した仕組みを構築できました。またこうすることによって日々の受注の状況も把握でき、ある程度の未来予測もできるようになっています」

phot 昨年の7丁目の様子

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