コロナで吹き飛んだ経済効果400億円 オンライン開催に踏み切った「さっぽろオータムフェスト」の勝算――「Amazonと同じにはしない」「近づけない、集めない」 時代を生き抜く、企業の知恵(4/4 ページ)

» 2020年10月17日 05時00分 公開
[大久保徳彦ITmedia]
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「制限がある中でも、できることを」 雪まつり開催検討へ

 札幌市が公表する『平成30年度観光客動態調査』によると、北海道の観光客の入込状況の数字は、道内客が84.2%、道外客が10.8%、外国人が5.0%となっている。新型コロナウイルスの影響で、首都圏や訪日外国人の観光客が激減していることは周知の事実であるが、京都など他県の観光地と比較すると、北海道の観光客はもともと道内からの観光客が多くの割合を占めており、そのせいか札幌市内を散策していても閑散としている印象は受けない。

phot 北海道の観光客の入込状況の数字は、道内客が84.2%、道外客が10.8%、外国人が5.0%となっている(札幌市『平成30年度観光客動態調査』より)

 今年度は「さっぽろ雪まつり」も例年と同じ形での開催は難しそうだが、「コロナ禍で制限がある中でも全て中止にしてしまうのではなく、できることをやっていきたい」と山上氏は話す。

 20年は多くのリアルイベントが中止に追い込まれてしまった一方、オフラインでのコミュニケーションの形が見直された年でもあった。さっぽろオータムフェストのような大規模なイベントは、季節の風物詩として多くの参加者から期待されていることに加え、先述したように開催に伴う経済効果も非常に大きい。

 新型コロナの影響がすぐに収まるものではない以上、経済効果を考えて単に中止にするのではなく、あくまでもイベントとしては開催に舵を切り、従来そのイベントが提供している価値を、オンライン開催や限定開催という形でも何とか実現しようとする姿勢は、多くのイベント運営者にとって参考になるだろう。

 リアルのイベントをオンライン開催へ移行するにあたっては、映像コンテンツ配信(ウェビナー)のようにほぼ従来と遜色のないユーザー体験を提供できるものもある一方で、パーティ・交流会のように既存のオンラインツールでは再現が難しいものもある。イベントにせよ、接客販売にせよ、リアルな体験をオンラインで、いかにして再現していくかは工夫の余地がある。

 今回のさっぽろオータムフェストのように各地でさまざまなオンライン企画が開催されることで、徐々にベストプラクティスがたまっていく。企業関係者や自治体関係者の努力と工夫こそがウィズコロナ時代を生き抜くための知恵となる。

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著者プロフィール

大久保徳彦(おおくぼ・のりひこ)

POLAR SHORTCUT 代表取締役CEO。1985年北海道生まれ。慶應義塾大学法学部卒。ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)にて、プロジェクトリーダーとして多くの新商品企画や新規事業推進プロジェクトに従事。その後、動画制作のスタートアップ企業Crevoにて、経営企画・人事・財務・新規事業開発領域を組織のNo.2として統括。伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどから3.4億円の資金調達を実行。北海道の成長産業支援をテーマに2020年4月にPOLAR SHORTCUTを設立。


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