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» 2020年10月19日 07時00分 公開

「広場=にぎわい」は古い? 神田のオフィスビルで生まれた新しい空間の仕掛けアフターコロナ 仕事はこう変わる(2/4 ページ)

[加納由希絵,ITmedia]

昔ながらの「通りの文化」に注目

 パブリックスペースの設計を担当したNADの後藤崇夫氏は「広場の理想像は『にぎわいを作ること』だという考え方を疑うことから始めた。にぎわいを否定するわけではないが、イベント時などのにぎわいだけではなく、どのように日常のアクティビティーに使ってもらえるかを重視した」と話す。そのためにはただ家具を置くだけでは使われない。人の行動を促す機能を取り入れたという。

 その機能のポイントとなるのが、銀のフレームだという。イメージは「境界」。軽く腰掛けて会話が生まれるきっかけとなったり、イベント時には照明器具や看板、サインを取り付けて雰囲気を変えたりできる。また、テントを張って屋根を付けられるようにもなっており、マルシェなどを開催するときに活用できる。屋外にありながら、広場全体を支える柱や梁のような存在になっているのだ。

神田スクエアのパブリックスペース。象徴的な銀のフレームがさまざまな役割を担う

 また、ビルの敷地外にある地域との一体感も重視している。なぜなら、神田には昔ながらの「通りの文化」があるからだ。

 有名な古書店街が近くにあるほか、神田スクエアの目の前には、かつて毎月5と10の付く日に縁日が開かれていた「五十(ごとう)通り」も通っている。現在でも祭りやイベントなど地域を盛り上げる催しが開かれている。

 新しく建てたビルでも、そういった街の個性を重視。パブリックスペースは、ビルと地域を結び付ける役割も担う。オフィスワーカーが快適に使うだけでなく、外からも入りやすい場所にするため、広場の地面はあえて、外の歩道と同じ見た目に仕上げている。また、ビルの1階にスーパー「サミット」が入っているのも、地元の人に日常使いしてもらうため。買い物に訪れた人が、子どもを芝生広場で遊ばせる姿も見られるという。

神田スクエアの芝生広場

 後藤氏は「神田スクエア周辺は商業地ではなく、日常生活がある街。パブリックスペースは、日常的なワークスペースや地域の憩いの場と、非日常のイベント用スペースを両立させて、神社の境内のような存在になれば」と話す。

 パブリックスペースを設計したのは新型コロナの影響が出る前だが、その後のコロナ禍によって、開放的なワークスペースの需要は増え、快適に過ごせる広場は有効活用されそうだ。ただ、それだけでなく、オフィスワーカーも地域の人も自然に入ってこられるという意味でも、開放的な公共空間が街に合っている。

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