Bリーグは、プロ野球とJリーグを超えられるか? 「B・J業務提携」の読み解き方池田純のBizスポーツ(3/5 ページ)

» 2020年10月20日 05時00分 公開
[池田純ITmedia]
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主従関係はどうなるのか?

 今回の業務提携によって資本の移動などがあるのかなど、その裏側は私のあずかり知るところではありません。もしJリーグ(AX)がBリーグ(BX)から「その強みを得たい」というものがあるなら、つまり「AX<BX」の強みの構造がどこかにあるならば、相互関係が成り立つでしょう。

 ただ、BリーグがJリーグの発注額を超えることは現状でありませんし、Jリーグには10年で2100億円ともいわれるDAZNからの放映権料による資金面の優位性もある。今回の業務提携で、Bリーグが同業種であるJリーグに何を提供できるのでしょうか。渡せるものがなければ対等な関係にはなり得ません。そして、業務提携の先にあらかじめゴールをどう“したたかに”見据えているのかが私には至極興味があります。

8月に放映権契約を新たに結んだJリーグとDAZN(出所:Jリーグ発行のプレスリリース)

 私自身の関心事としては、埼玉でのブロンコスの経営、人気づくりにおいて、今回の業務提携によって放映権の在り方、地域との接点のつくり方に、どのような影響が出てくるかというものもあります。

スポーツと地域活性化の行方は?

 クラブが、それぞれの地域で接点をつくる上で重要なのは、試合と試合の結果を地域の人々にどれくらい見せられるかということ。スポーツによる地域活性化において、肝になるのがローカルのテレビ局やローカルの新聞社の存在です。ベイスターズでいえば神奈川新聞とtvk(テレビ神奈川)のように古くからある地域に密着したメディアでした。こうしたメディアを通すことで、地域で生活する一般生活者や地域の経済人に情報が届き、多様な関係を築いていくための土台となる側面があります。

ローカルなメディアを活用しながら、ベイスターズは地域活性化も果たした(出所:ゲッティイメージズ)

 Jリーグは、16年まで各地域の放送局が個別に制作会社と契約し、放送した映像の著作権も放送局が持っていました。これをスカパー!が取りまとめていた形です。DAZNが放映権を取得した17年以降は、映像の著作権管理や映像制作をJリーグが主体となって行うようになったと聞きます。

 今回の業務提携によってBリーグの放映権の形が、どこまでJリーグと一元化されるのかは分かりませんが、「ホームの試合は地元の地方局で見られるけれども、アウェー戦を見ようと思ったらDAZNに入らないと見られない」というような、中央集権的にリーグにだけ映像の権利が置かれる構図は現状のBリーグには時期尚早な気もします。一方で、BリーグもDAZNからの巨大な放映権料を近い将来見込んでいる、したたかなゴール設定のプロセスなのかもしれません。

 ただ、野球でもサッカーでもない、まだまだ発展途上なバスケットボールにおいては、お金よりもまずは地域との接点、バスケファンでない地域の人々も気軽に試合を家庭で見ることのできる「無料で受動的な接点」がまだまだ重要ではないかと私個人は考えています。そういった観点で理想的なのは、ホームもアウェーも映像の権利が各クラブにも置かれ、接点として目に触れる状況を地域のメディアで柔軟につくれる形です。

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