病気になってから治療に通うのではなく、普段から健康管理に気を付けようというのが近年の潮流である。健康意識を高めるために、ユニークな方法を取り入れた企業の事例を紹介する。
歳を取れば、誰もが健康を損ねるわけではない。高齢でも健康な人もいれば、年齢は若いのに不健康な人もいる。実年齢と健康状態は必ずしも比例しない。そこで、実年齢と健康状態を表す指標を比較し、社員に健康意識を根付かせたのが株式会社ユードムである。
同社は、業務系や制御系のソフトウェア開発を中心に、CO2測定器の開発や環境IoTシステムを開発している。社会インフラ領域を手掛けるだけに、高い信頼性が要求される。社員の多くはシステムエンジニアだが、技術力はもちろんのこと、プロのシステムエンジニアとして「健康であること」が求められる。そこで同社は、「こころとからだの健康」を経営課題の一つとしている。
糖尿病(2型)、高血圧症、心臓病、がんなどの生活習慣病は、日常生活のなかで運動したり食生活を改めたりすることによって予防可能だ。これらは一般に健康診断などですぐに結果が出て、対処策は分かるはずである。しかし実際には、健診結果はスルーされて、社員の行動変容に結び付かないことも多い。
肝心なのは、社員の意識変革である。そこで同社が健康管理の意識付けに取り入れたのが、社員の「身体年齢」を定期的に計測する方法だった。
身体年齢は、ヘルスケアの指標として開発された。実年齢が40歳でも「身体年齢は29歳」などと健康状態と比例した年齢として表され、健康度が高ければ身体年齢は若くなる。特色は、筋肉に注目した点にある。筋肉量は、健康と大きな関連がある。適度に筋肉が付いている人は、血糖値データや内臓脂肪データが良好な傾向があることが判明している。
筋肉量といっても、レントゲンを使って計量するのではない。7項目の簡易な計測で、個々人のパーソナルスコア化された年齢として出てくる。計測するのは身長、体重、腹囲、握力、閉眼しての片足立ち時間、椅子の座り立ち、腹筋運動での上体起こしである。
握力は筋力と、また閉眼片足立ちは運動機能と関連している。短い時間しか片足で立っていられない人は、運動機能が低下している可能性がある。
体重あたりの握力と閉眼片足立ちの成績が悪いほど、2型糖尿病の発生リスクが高くなるという研究論文も発表されている。
記入シートにある項目をチェックし、パソコンやスマホのパーソナルスコア算出画面に測定項目を入力すると、身体年齢などの数値が示される(測定結果の図)。アプリケーションは、ネット上のクラウド接続で提供される。開発したのは、ヘルスビットというベンチャー企業である。健康経営企業や健康推進事業に力を入れている自治体などを対象に、身体年齢のスコア計測システムを提供している。
ユードムの工夫は、この身体年齢を確定拠出年金と組み合わせて、社員の健康意識へのインセンティブとしたことだ。身体年齢が若い社員には、年金の掛け金を会社負担で増額したのである。
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