先に結論を言っておきますと、非正規の低賃金問題の根っこにあるのは「性差別」です。「女性? 低賃金で何が悪い?」という40年前の間違った価値観が、非正規全般の低賃金の容認につながっています。
時代をさかのぼること、今から60年以上前の1950年代。高度成長期に突入した日本では、「臨時工」を増やしてきました。臨時工とは、今でいう非正規です。
高度成長期に企業は本工(=正規雇用)より賃金の安い臨時工を増やすことで、生産性を向上させていたのです。
当時、臨時工の低賃金と雇用形態の不安定さは、労働法上の争点として繰り返し議論され、大きな社会問題に発展。国を動かしました。
政府は1966年、「不安定な雇用状態の是正を図るため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実すること」を基本方針に掲げ、「不安定な雇用者の減少」「賃金等の差別撤廃」を重要な政策目標に位置付けたのです。
ところが、1970年代になると需要が拡大し、人手不足解消に臨時工を本工として登用する企業が相次ぎました。その結果、臨時工問題は自然消滅。が、その一方で、主婦を「パート」として安い賃金で雇う企業が増えていったのです。
パートからも臨時工同様に、「賃金差別をなくせ!」という声が上がりましたが、「女」であることから賛同する声は少なかった。本工と臨時工の格差問題では「家族持ちの世帯主の男性の賃金が安いのはおかしい」という声に、政府も企業もなんらかの手だてを講じる必要に迫られましたが、パートは主婦だったため、あまり議論が盛り上がらなかったのです。
「本来、女性は家庭を守る存在であり、家族を養わなくてもいい人たち」という“世帯思想”のもと、「パート(=主婦)は、あくまでも家計補助的な働き方」という考えが当たり前となり、賃金問題は置き去りにされてしまったのです。
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